マラソンランナーといえば、
どのような体型をイメージしますか?

比較的腕も足も細く、全体的にやせ型の選手が
多いですよね。

ではウエイトトレーニングを行うと
体型はどのように変わっていくでしょうか?

一般的なイメージとしては、
筋肉がついて身体が大きく、
太くなっていくイメージですかね。

このようなイメージから、
「ウエイトトレーニングは無駄に身体を太くし、
マラソンランナーなどの持久的競技のアスリートの
競技パフォーマンスを低下させる」

といった思い込みがスポーツ界ですら
まだ残っているように感じます。

そうなんです。
「思い込み」いうことは、
「ウエイトトレーニングで持久的競技のアスリートの
競技パフォーマンスが低下する」というのは間違いで、
むしろ最近の研究では
「ウエイトトレーニングは持久的競技のアスリートの
競技パフォーマンスを向上させる」
といったことが明らかにされてきているのです。

本日は、
ウエイトトレーニングが持久的パフォ―マンスに及ぼす
影響に関する研究のメタアナリシスをご紹介します。

ウエイトトレーニングは持久的パフォーマンスを向上させる

Strength Training for Middle- and Long- Distance
Performance: A Meta-Analysis
Berryman et al, 2017

持久的競技のパフォーマンス(75秒以上の課題)に
対するウエイトトレーニングの効果を検討した
研究論文の結果を統合し、28の研究が
採用されています。

競技はマラソン、サイクリング、クロスカントリー、
水泳などになります。

【結果】
ウエイトトレーニングが持久的パフォーマンスに与える影響

  SMD 95%CI
持久的パフォーマンスの向上 0.52 (0.33~0.70)
エネルギーコストの改善 0.65 (0.32~0.98)
最大酸素摂取量の向上 0.03 (-0.16~0.23)

※SMD:
トレーニングがどの程度効果があったのかを表す数値
※95%CI:
95%信頼区間のこと。結果のおよそ95%がその範囲に
あてはまることを示す。
この数値が0をまたいでいれば有意に効果ありと判断する。

28もの研究を統合した結果、
持久的パフォーマンスの有意な向上が示されました。

つまり、
ウエイトトレーニングには
持久的パフォーマンスを高める
強いエビデンスがある
と言えそうです。

エネルギーコストとは、あるスピードを出すのに
必要な酸素摂取量を表した数値です。
同じような言葉で、ランニングエコノミーといった
表現もあります。

つまり、大きな最大酸素摂取量を持ち、
少ないエネルギーコストで運動ができる選手ほど
持久的パフォーマンスが高いと言えます。

この研究結果(上記の表)をもう一度見てみると、
エネルギーコストは改善しており、
最大酸素摂取量は変化していないことが分かります。

つまり、
ウエイトトレーニングは最大酸素摂取量ではなく、
エネルギーコストの改善を通して
持久的パフォーマンスを向上させるようです。

ウエイトトレーニング導入の注意点

一方で、
ウエイトトレーニング導入の際に
注意しなければならない点に、
最大酸素摂取量の低下が挙げられます。

Berrymanらの研究では、
最大酸素摂取量に対して
有意な負の効果は示されていなかったのですが、
トレーニングの組み方によっては
最大酸素摂取量の低下も考えられます。

① 持久的な競技練習、トレーニングがおろそかになる

最大酸素摂取量は持久的なトレーニングによって
向上します。
そのため、ウエイトトレーニングを行うのに
時間を割いたために、この部分を極端に削ってしまうと
最大酸素摂取量が低下してしまうことも考えられます。

最大酸素摂取量は
持久的競技者にとっては非常に大事なものですので、
そうなってしまっては本末転倒ですよね。

しかしながら、
ウエイトトレーニングも持久的トレーニングも
常に高ボリュームで行ってしまうと、
それはそれで傷害発生やオーバートレーニングの
リスクになってしまいます。
バランスが大切ですね。

② 筋肥大を伴うプログラムは最大酸素摂取量が低下させる

最大酸素摂取量は
筋のミトコンドリア密度にも影響を受けます。

筋肥大による体重増加やミトコンドリア密度の低下は
最大酸素摂取量にはネガティブな影響を与える
可能性があります。
筋肥大ではなく最大筋力向上に重きをおいた
プログラムのほうが良いでしょう。

おわりに

近いうちに持久的競技者の間でも
ウエイトトレーニングを行うことは常識に
なってくるでしょう。

ただトレーニングを行うだけではなく、
競技パフォ―マンス向上にどのようにして
貢献するのかを把握することで、
より良いトレーニングプログラムが組めるはずです。

根拠をもった指導をするためにも、
このあたりのメカニズムはおさえておきましょう!

参考文献
Berryman, N, Mujika, I, Arvisais, D, Roubeix, M, Binet, C
and Bosquet, L. Strength
Training for Middle- and Long-Distance Performance:
A Meta-Analysis.
Int J Sports Physiol Perform 1–27, 2017
http://journals.humankinetics.com/doi/10.1123/ijspp.2017-0032