アスリートして技術を向上し、
自信を持って試合に臨むには?

やはり、多くの練習をこなすこと。
辛い練習やトレーニングを乗り越えてきたこと。

当たり前ですがこういったことは
必要になってきます。

「量より質」とは言ったものですが、
やはり絶対的な練習量といったものは
高いレベルに達するためには必須です。

一方で、量が多ければ多いほどいいかというと、
そんなことはありません。

一般的には週1回でのトレーニングよりは
週2~3回のトレーニングのほうが効果は高い
とされていますし、
週に1回1時間の技術練習では、
競技スポーツを極めるには不十分でしょう。

しかし、1日何時間もの練習を
毎日2部練、3部練で行うことは、
オーバートレーニング症候群を引き起こしたり、
逆効果になり得ます。

長い練習が引き起こすネガティブな効果

今回は球技スポーツのように、
競技中に低強度運動と高強度運動を含むスポーツを
例にとって解説していきます。

まず、バスケットボールやサッカーなどの
球技スポーツにおける、
1試合の低強度~高強度運動の割合は
以下のように報告されています。

※各距離の目安
長距離:マラソンペース~
中距離:800m,1500m走ほどのペース~
短距離:それ以上のペース~スプリント

勝負を分ける一瞬の局面では
スプリント的な瞬発力が求められますが、
競技中の多くを占めるのは
『歩行、ジョギング~長距離走程度のペース』

以前の記事では、持久的な刺激は
筋肥大、筋力/パワーの向上を阻害する
といったことを解説しました。

つまり競技スポーツの練習自体を
長い時間行いすぎると、
選手の身体は細く、瞬発的な力を発揮しづらい
身体に近づいていくということです。

もちろん、獲得したい技術的、戦術的な要素が
多くある場合は練習時間を長くせざるを得ない
場合もあるかと思います。

しかし、
長い練習時間がそのような負の効果をもたらす
ということは、指導者は頭の片隅に
置いておくべきでしょう。

対策は?

そのような負の効果を防ぐには、
練習の密度を濃くすることが必要です。

密度を濃くというのは、

  • 無駄に長時間練習をしない
  • 練習の中での強度を高めるような工夫をする

といったことです。

これを達成するためには、

  1. 練習前にミーティングの時間をしっかり取り、
    練習の内容や意図をあらかじめ
    選手が理解できるようにしておく
  2. 試合の中の重要な局面を想定した
    高強度のメニューを中心組む
  3. 選手自身が練習メニュー間でテキパキと動く、
    高い運動強度を保つよう取り組む

といった方法が考えられます。

高強度運動ばかりになると、
逆に持久力が鍛えられないのでは?
といった疑問もあると思いますが、
練習中のレストを短くすることで
心肺機能にも負荷をかけられ、
持久的な刺激もしっかりとかかります。

一方で、練習に参加する選手の人数が多いために
練習のレストが長くなってしまう
といったこともあると思います。

そういった場合は、やはり練習とは別に
持久的なトレーニングが必要でしょう。

逆に言えば、練習に参加する人数が少なく、
練習の中で長い時間心拍数が上がっている
(160~200拍/分程度になっている)場合は、
練習とは別に持久力トレーニングを実施する
必要性は低いと考えられます。

まとめ

長時間練習のメリット、デメリットをまとめると
以下のようになります。

メリット
  • 多くの技術的、戦術的な要素を獲得できる
  • 長時間にわたる試合や、ダブルヘッダーでの
    試合への耐性の下地ができる
デメリット
  • 筋力やパワーの向上を阻害する
  • 怪我のリスクが上がる

もちろん、試合の負荷に比べて
練習量が少なすぎると、
そのギャップによって怪我をする
可能性も考えられます。

練習量の調節というのは
本来トレーナーの役割ではないので、
口を出し過ぎるのは越権行為になります。

しかし、フィジカル的な面での効果を
『コーチに伝える』というのは
トレーナーの役割なのではないでしょうか?

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考文献

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    Activity profile and physiological requirements of junior
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    Int J Sports Med 28: 1018–1024, 2007.