「冬場にトレーニングをして下地を作り、
夏や秋の大会に向けてしっかり練習を
していこう!」

良く聞く言葉ですし、
確かに練習量が減るシーズンは
トレーニング量をしっかりと確保するには
適切な時期です。

しかしぜったいに忘れてはいけないことは
『冬場に下地を作っても、
手を加えなければその下地は
あっという間になくなってしまう』
ということ。

ここを知らずに
冬場の努力を水の泡にしてしまっている
チーム、選手も多いのではないでしょうか?

ディトレーニング

トレーニングを行うことによって
各体力(筋力、持久力、パワー、スピード)を
高めていくことが可能です。

逆に、その体力要素に刺激を与える
トレーニングを中断してしまうと、
だんだんとその体力要素は失われていきます。
これをディトレーニングといいます。

例えば、学生時代はスポーツをしていたから、
少し走った程度だと息切れをしなかったけど、
スポーツをやめてからは階段を上っただけでも
息切れをしてしまう。
これもディトレーニングです。

冬場は外も寒く、日が落ちるのも早いので、
屋外のスポーツは活動できる時間が限られる
場合も多いと思います。
そんな中、
「練習ができないから筋トレをしておこう」
という発想で筋トレを行い、
身体も大きくなり、筋力もついた。

春から夏にかけては
練習がたくさんできるので、とにかく競技練習!
筋トレは時間が取れないので実施しません。

なんてことをするくらいなら、
冬場は筋トレも行わずに完全オフにして、
家で勉強でもしていたほうが有意義です。

なぜなら、
春~夏にかけて筋トレを定期的に行っていないと、
冬場につけた筋力の多くは失われるからです。

チームについているトレーナーは、
シーズン中にもトレーニングを継続する重要性を
具体的に説得力をもって説明できなければ
いけないでしょう。

維持のための筋トレの頻度、量

ではいったい筋力を維持するには
どの程度の頻度、量でトレーニングを実施すれば
良いのでしょうか?

そのヒントとなる研究を
Ronnestadらが2011年に行っています。*1

彼らの研究では、サッカー選手を用いて、
シーズン前に10週間、週2回の
筋力トレーニングを行いました。

その結果、筋力は19%向上、スピードは1.8%の
向上を示しました。

そしてここからがポイントで、
シーズンインしてからは

  • 週に1回筋トレを行うグループ
  • 2週間に1回筋トレを行うグループ

に分けて、その後の筋力、スピードの変化を
追いました。

その結果、
週に1回のトレーニングを行っていたグループでは
3か月に渡り筋力もスピードも維持されたのに対し、
2週間に1回でトレーニングを行ったグループは、
シーズン前に獲得した筋力、スピードを
半分以上失ってしまいました。

この研究では、
シーズン中にまったくトレーニングを行わない
というグループを設定していなかったのですが、
もしもまったく筋力トレーニングを行わなければ
ディトレーニングの効果も大きく、
シーズン前に得た筋力、スピードが失われる時間も
早かったでしょう。

ちなみにシーズン中に行っていたトレーニングは
スクワット4RM×3set
ボリュームとしてはだいぶ少ないですよね?
実施するうえでもそこまで時間は
とらないと思います。

逆に言えば、週1回のこの程度のトレーニングで、
シーズン前に高めた筋力を維持してくれる
ということ。

そう考えると
費用対効果はめちゃくちゃ高いですよね?

原則として、トレーニングを行うのであれば
シーズン中であろうと必ず実施しましょう。

練習量が多くなる時期は、
トレーニング量が多くなると
怪我のリスクもあるかもしれません。

試合期では無駄な疲労を溜めたくないので、
トレーニング量は増やせないかもしれません。

そんなときは割り切って
維持のためのトレーニングに徹しましょう!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考文献

  1. Rønnestad, BR, Nymark, BS, and Raastad,T.
    Effects of In-Season Strength Maintenance
    Training Frequency in Professional Soccer Players.
    J Strength Cond Res 25: 2653–2660, 2011.
    http://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=00124278-201110000-00003