筋力がアスリートにとって重要な体力要素の
1つであることは疑いようがありません。
ではその筋力高めるためにはどのような負荷設定で
トレーニングをするのが良いのでしょうか?

そもそもトレーニングの総負荷を決定する要因には

  • 強度(%1RMなど)
  • 1セットあたりの回数(レップ数)
  • セット数

などが主に考えられます。
(他にもレスト、下降速度、挙上速度、
動作範囲なども考えられますが、
ここでは割愛します)

教科書的には高強度(80%以上)低レップと
書いてあることも多いと思いますが、
それはトレーニング経験が長くても初心者でも
そうなのでしょうか?

また、適切なセット数というのは
どのくらいなのでしょうか?

本日はその答えについて検討した
メタアナリシスを2つご紹介します。

筋力向上のための効果的なトレーニングについてのメタアナリシス

A meta-analysis to determine the dose response
for strength development
Rhea et al., 2003

Maximizing strength development in athletes:
a meta-analysis to determine the dose-response
relationship.
Peterson et al., 2004

どちらも筋力向上のために効果的なトレーニングの
変数(強度、レップ数、セット数)について
検討したメタアナリシスなのですが、
Rheaらの2003年の研究においては
トレーニング経験1年以上の被験者(Trained)と
そうでない被験者(Untrained)に分けて
解析しています。

そしてその1年後に発表された同研究グループの
研究(Peterson et al., 2004)においては
「競技アスリートに限定するとまた違った結果が
でるんじゃない?」
という仮説に基づき、
競技レベルの高いアスリートに限定して
解析を行っています。

それでは各群(Untrained、Trained、Athlete)の
結果を見ていきましょう。

強度

ウエイトトレーニングの強度は
RM(Repetition Maximum)
(5RMであればギリギリ5回挙上できる重さ)
○○%1RM
(最大挙上重量の何%か)
などで表されます。

この研究では%1RMで換算しており、
レベル別のそれぞれの強度のEffect Sizeは
以下の図のようになりました。

各群における最も効率的なトレーニング強度は、
Untrainedの場合は60%1RM前後、
Trainedの場合は80%1RM前後、
Athleteの場合は85%1RM以上
という結果になりました。

この違いから、
レベルが高ければ高いほど筋力UPのためには
大きな強度(重りの負荷)が必要
だということが分かります。

適した負荷以上のものをかけてしまうと、
オーバートレーニングからか回復が追いつかずに
筋力の向上率が低くなっているのでしょう。

一方で、TrainedとAthleteにおいては
85%以上に負荷の研究が足らず、
メタアナリシスを行うことができていません。

2004年以降にさらに研究がなされ、
それも含め再びメタアナリシスを行うと
さらに違う結果が出る可能性もあるので、
Trainedは80%1RMが最も効果的なんだ!
Athleteは85%1RMが最も効果的なんだ!
というのは早とちりになるかもしれないので
注意が必要です。

セット数

セット数に関する解析は以下のようになりました。

強度と同様、グラフが山形を示しており、
レベル別に適切なセット数があるようです。

Untrainedであれば4セット前後、
Trainedは研究が足らずデータがないのですが
おそらく5セット前後?
Athleteに関しては8セットが
最も大きいEffect Sizeを示しました。

これも強度と同じく、
レベルが高いほどより多くのセットが
効果的なトレーニングには必要なようです。

逆にトレーニングレベルの低い選手が
多量なセットを処方されると
オーバートレーニングなってしまうので
注意しましょう。

回数

この研究においては回数という項目で
メタアナリシスは行われませんでした。
これは、回数は強度に依存することが
多いからだと考えられます。
(3RMであれば3回、5RMであれば5回など)

しかしながら、トレーニングの方法として、
5RMをあえて3回しか行わなかったりと、
余裕をもって行うトレーニング方法もあります。

そこまで考えてしまうと長くなりすぎてしまうので
今回はこのへんで…。

まとめ

トレーニングレベルによって最適な強度、
セット数は変わってきます。
トレーニングレベルが高くなるほど
必要な強度もセット数も大きく、
多くなります。

一方、これらの変数はお互いに
関係を及ぼし合っています。
例えば、Untrainedであれば、
4セットを超えるとオーバートレーニングからか
効果が下がっていっていますが、
週頻度を減らしたり強度を調節したりすると、
もしかしたら低下を示さないかもしれません。

これらのデータが絶対という訳ではありませんが、
是非材料の1つとして使ってみてください!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考文献
1. Peterson, MD, Rhea, MR, and Alvar, BA.
Maximizing strength development in athletes:
a meta-analysis to determine the dose-response
relationship.
J Strenght Cond Res 18: 377–382, 2004.

2. Rhea, MR, Alvar, BA, Burkett, LN, and Ball, SD.
A meta-analysis to determine the dose response
for strength development.
Med Sci Sports Exerc 35: 456–464, 2003.