アジリティといえば球技スポーツにおいて
非常に重要な体力要素ですよね。

相手をかわす、ボールに素早く反応する、など、
アジリティが必要な場面は多々あります。

研究の世界では、アジリティの定義は
「刺激に対して反応し、素早く方向・速度の
変換を行う能力」とされており、
いわゆる「反応的な要素」も含めて
アジリティとされています。

しかしながらトレーニングにおいては、
まずは反応的な要素抜きにして、
そもそもの方向転換のスピードを高める
必要がありますよね。

そのために皆さんは何を行いますか?

ラダー?
ウエイト?
バランストレーニング?

いろいろな案が出てくるかもしれませんが、
個人的には
「アジリティを高めるためのトレーニング」
なんてものは無いと考えています。

言い方を変えると
「アジリティという言葉の定義が広すぎて、
何をすれば良いのか分からない」
ということです。

アジリティを測定するテスト

例えば「スピード」を評価するときには
どのようなテストを用いますか?

おそらく、20m走や50m走など、
「直線をまっすぐ走り、その時のタイムで
スピードを評価」すると思います。

そのテストのタイムが短縮された
=スピードが向上した
と捉えて問題ないでしょう。

一方で、「アジリティ」を評価するときには
どのようなテストを用いますか?

反復横跳び?
10mの切り返し走?
サイドステップを用いたテスト??

そうなんです。
アジリティを評価するテストは種類が多く、
そのためアジリティという言葉が示す範囲が
非常に広いのです。

そのことがなぜ問題になるのかというと、
それぞれのテストが独立しており、
同じアジリティという言葉で示される能力
であるのにも関わらず、まったくの別物なのです。

実際にSporisら(2010)は、
スラローム走、前後走、180度ターンなど
6つのアジリティのテストを行い、
それらのタイムの相関について調査した結果、
多くのテストで弱い相関しか認められず、
一部のテストにのみ中程度の相関が認められたに
とどまったそうです。

競技に必要なアジリティ

また、競技によっても
必要なアジリティは違ってきますよね?

例えば、卓球であれば、
サイドステップを用いた左右の方向転換が必要、
サッカーにおいては、
スプリントからの方向転換が必要でしょう。
バスケットボールにおいては
相手のフェイントを見抜き、
動きに反応して左右に切り返す必要があり、
野球においては
打球に対する1歩のスタートが重要ですよね。

そのため一言に「アジリティ」と言っても、
競技によって必要なアジリティは違ってきますし、
1つの競技でも色んな種類のアジリティが
必要な場合もあります。

例えば、バスケットボールにおいては
・サイドステップを用いた切り返し
・スプリントからの方向転換
・前方向へ素早く距離を詰め、
左右もしくは上方へ反応する動作
など、様々なものが必要になります。

今一度、「アジリティ」というあやふやな言葉に
惑わされずに、本当に必要な能力は何なのか?
といったことを考えてみてください!

執筆者:佐々部孝紀

参考文献
Sporis, G, Jukic, I, Milanovic, L, and Vucetic, V.
Reliability and Factorial Validity of Agility Tests for
Soccer Players.
J Strength Cond Res 24: 679–686, 2010.
Available from: http://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=00124278-201003000-00012