前回の記事では、スポーツ傷害
特に慢性傷害、ノンコンタクトの急性外傷は、
ミスユースかオーバーユース、
もしくはその両方の負荷に対して
身体の組織が耐え切れずに受傷すること

また、スポーツ傷害を予防するには

  • 身体を強くする
  • 正しい身体の使い方をする
  • 身体に負荷がかかり過ぎないようにする
  • 装具を活用する

といった方法が考えられるといったことを
紹介しました。

今回は、それらのアプローチに
どれくらいの効果があるのかを示す
データを紹介します。

身体を強くする

特に肉離れなどの筋腱系の怪我は、
その組織の強度不足
大きな受傷要因になっていると考えられます。

肉離れなどを中心とした
複数の傷害の発生率に対して、

  • ウエイトトレーニング
  • ストレッチ
  • バランストレーニング

それぞれの傷害予防効果を検討した
メタアナリシスでは、
ウエイトトレーニングの傷害予防効果が最も高く
傷害の発生率を約1/3にまで抑えた
ことが
報告されています。

このメタアナリシスに含まれた研究では
肉離れ以外にもジャンパーズニーなどの
腱炎の予防効果も示されており、
ウエイトトレーニングは筋腱系の傷害の予防には
役立つと言えそうです。

一方でこの研究では
ストレッチには傷害予防の効果がなかった
されており、そのことも非常に興味深いデータと
なっています。

正しい身体の使い方をする

一言に「正しい使い方」といっても、
何をもって正しいとするかは難しいところですが、
例えば、
「バランス能力」というのも
正しい身体の使い方の基礎の1つでしょう。

先述したメタアナリシスでも、
バランストレーニングである
固有受容器トレーニングが
足関節捻挫を中心とした傷害を約半減させる
効果が示されています。

それら基礎的なバランス能力をベースに、
Knee in Toe outなど
下肢のアライメントのミスユースの修正も、
前十字靭帯損傷など膝の外傷予防には
有効でしょう。

身体に負荷がかかり過ぎないようにする

「慣れていない負荷を急激にかけると
 怪我をしてしまう」
というのはなんとなくイメージはできますよね?

これは研究でも示されており、
過去4週間の負荷に比べて、
その週の負荷が高くなり過ぎると
傷害の発生率が急増するといったことも
研究で示されています。

特に学生スポーツであれば、
テスト期間・長期休暇のオフ明け、合宿などでは、
急激に負荷が増加する傾向にあるので、
その期間は特に注意が必要です。

装具を活用する

発生が非常に高い怪我の1つ「足関節捻挫」

この予防法としてまず思いつくのは
「テーピング」「サポーター」ですよね。

実際この2つは
捻挫の再発率を約30%までに低下させることが
できたと示されており、
テーピングとサポーターでは
予防効果には差がなかったとされています。
もちろん、テーピングの巻き方によって
予防効果は増減するとは考えられます。

まとめ

傷害を予防するには、
以上の4つのアプローチを中心に、
多角的な目線を持つ必要があります。

「トレーナー」といっても
その資格やバックグラウンドは異なることも
多いかと思われます。

これは傷害予防に限ったことではないですが、
様々な専門家が連携をすることで
最大限の効果が発揮できます。

自分の専門分野の知識も深めつつ、
他分野との積極的な連携を
心掛けるべきでしょう!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考文献

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    A systematic review on the effectiveness of external ankle
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