『ハムストリングス』

これはモモの裏の筋肉で、
傷害予防・パフォーマンス向上など、
様々な点において重要な筋肉ですよね。

ある程度のレベルのアスリートなら、
「ハムってどこ?」と聞けば
大体の場所は指させるでしょう。
それくらい有名な筋肉です。

一方でトレーナーであれば
そのハムストリングスを構成する
各筋肉を挙げられるのはもちろん、
各筋肉の機能の違いについても
言及できる必要もありますよね。

今回はこのハムストリングスについて
お話したいと思います。

各ハムストリングの違い

ひとえに、ハムストリングスといっても
細かく分けると

①大腿二頭筋長頭

②大腿二頭筋短頭

③半腱様筋

④半膜様筋

の4つで構成されます。

●外側or内側

上記の
①②をまとめて
『外側ハムストリングス』
③④をまとめて
『内側ハムストリングス』
と呼ぶこともあります。

その名称の通り、
大腿二頭筋長頭・短頭はモモ裏の外側に、
半腱様筋、半膜様筋はモモ裏の内側に位置します。

外側ハムストリングがメインで働くと
膝関節は外旋しながら屈曲し、
内側ハムストリングがメインで働くと
膝関節は内旋しながら屈曲します。

●単関節筋or二関節筋

大腿二頭筋短頭
膝関節屈曲(と膝関節外旋)に関わる
単関節筋です。

一方で他の3つの筋肉
膝関節屈曲と股関節伸展に作用する
二関節筋です。

股関節の伸展運動には大殿筋と協働して
3つの二関節筋のハムストリング
(大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋)
も働く一方で、大腿二頭筋短頭は作用しません。

●紡錘状筋or羽状筋

半腱様筋は紡錘状筋で、
他の筋肉は羽状筋に分類されます。

これらの筋はそれぞれ

羽状筋:比較的伸張位で力を発揮しやすい

紡錘状筋:比較的短縮位で力を発揮しやすい

といった特性を持っています。

トレーニングやリハビリへの活用

ハムストリングスの中で
肉離れを受傷するのはほとんどが二関節筋の羽状筋
つまり大腿二頭筋長頭と半膜様筋で、
特に大腿二頭筋長頭が多いと言われています
(Heiderscheit et al., 2010)。

そのため、
ハムストリングの肉離れを予防するには
これらの筋肉に
しっかりと負荷をかけた
トレーニングを実施すること

重要になってきます。

また、肉離れのリハビリの初期段階で
患部に負荷をかけ過ぎたくない場合は、
肉離れをしていない半腱様筋に
ターゲットをしぼって負荷をかける
ということも
有効でしょう。

伏臥位(股関節伸展位)の膝屈曲位で
膝屈曲の力を出すと、
紡錘状筋である半腱様筋の収縮を感じられるかと
思います。

大腿二頭筋長頭のリハビリの初期段階では、
その状態からさらに
内旋方向に膝をコントロールしながら
膝を屈曲すると患部の関与が比較的小さくなるので
周囲筋の萎縮の予防、可動域回復には効果的です。

また、
前十字靭帯の再建を半腱様筋の腱から行った場合は
自動での膝深屈曲(=半腱様筋の収縮)が
しづらくなってしまうことも多いです。

そういった場合は
マシンでのレッグカールにおいて
シーテッドレッグカールより
プローンレッグカールのほうが
筋がより短縮位になり、
半腱様筋を刺激できるのでおすすめです。

また、逆に
RDLなど膝伸展位(軽度屈曲位)で
股関節を屈曲させるような種目は、
半膜様筋や大腿二頭筋長頭を刺激すると
考えられます。

まとめ

ハムストリングスは
お互い協働して働くことも多い筋群ですが、
その作用は微妙に違ってきます。

特に
リハビリや、傷害要望のアプローチを行う場合は、
その微妙な違いが重要になってきますよね。

次回の記事では
実際にトレーニングごとの違いを検証した
研究についても紹介しようと思います。

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考資料

  1. Heiderscheit, BC, Sherry, MA, Silder, A,
    Chummanov, ES, and Thelen, DG.
    Hamstring strain injuries: Recommendations for diagnosis,
    rehabilitation, and injury prevention.
    J Orthop Sports Phys Ther 40: 67–81, 2010.