前回の記事では
ハムストリングスの分類と、
各ハムストリング
(大腿二頭筋長頭・短頭、半腱様筋、半膜様筋)の
働きの違いについて触れました。

まずは特に重要な、
羽状筋、紡錘状筋の違いについて
少し復習をします。

紡錘状筋と羽状筋

半腱様筋は紡錘状筋で、
他の筋肉は羽状筋に分類されます。

これらの筋はそれぞれ

  • 羽状筋:比較的伸張位で力を発揮しやすい
  • 紡錘状筋:比較的短縮位で力を発揮しやすい

といった特性を持っています。

実際の筋活動の違い

いろいろなエクササイズの
内側ハムストリングと
外側ハムストリングの活動の違いを、
筋電図で測定した研究を紹介します。

Bourneたちは10種類のエクササイズを実施し、
外側ハムストリングと内側ハムストリングの
それぞれの筋活動(EMG)を
筋電図にて測定しました。

この測定の限界は、
近い筋肉(半腱様筋なのか半膜様筋なのか)の
厳密な判別は難しい
ということです。

そのため、このデータは

  • 外側ハムストリング⇒大腿二頭筋
  • 内側ハムストリング⇒半腱様筋&半膜様筋

として解釈するのが良いでしょう。

この研究では
外側ハムストリングの
EMG/内側ハムストリングEMGの比率

算出しており、
外側ハムストリングの活動比率が
最も高かったのが
45度ヒップエクステンション(図のHE)でした。
また、外側ハムストリングの活動比率が
最も低かったのが
ノルディックハム(図のNHE)
といったことも示され、
その2つのエクササイズに関しては、続いて
ファンクショナルMRIを用いた細かい測定
実施されました。

ファンクショナルMRIでは
筋の活動後の状態を断面図を通して
確認できるので、
筋電図では測定できなかった
半腱様筋、半膜様筋の活動の違いなども
観察できます。

以下が

  • 45度ヒップエクステンション
  • ノルディックハム

それぞれのエクササイズ実施後の
各筋の活性の状態です。

BFLH:大腿二頭筋長頭

BFSH:大腿二頭筋短頭

ST :半腱様筋

SM :半膜様筋

まず、
大腿二頭筋短頭の活動において
ノルディックハムのほうが大きかったことが
判明しました。
これは45度ヒップエクステンションでは
膝屈曲の活動が伴わず、
ノルディックハムでは
膝屈曲のエキセントリックの出力をしている
ことから説明できますよね。

また、筋長の観点から考えると、
45度ヒップエクステンションは
解剖学的肢位(膝関節・股関節が真っすぐの状態)
からより伸長されます。
一方でノルディックハムは股関節0度、
膝関節屈曲位でスタートするため、
より短縮位での活動が強いられます。

このことから考えると、
ノルディックハムで、紡錘状筋である
半腱様筋の活動率が高かった
のも
頷けますよね。

また同じ研究グループの別の研究(1)で、
この2つのエクササイズのどちらかを
10週間実施したところ、
大腿二頭筋長頭の筋長は
ノルディックハムのほうが長くなっていた
ことも
報告しています。
これはノルディックハムが
エキセントリック局面のみを扱った
エクササイズだから
でしょう。

これらの研究から以下のようなことが言えると
考えられます。

  • 45度ヒップエクステンションのような、
    筋が伸張位で活動する
    股関節主働エクササイズのほうが、
    大腿二頭筋長頭、半膜様筋は鍛えられる。
  • ノルディックハムのような、
    筋が短縮位で活動する
    膝関節主働エクササイズでは
    半腱様筋、大腿二頭筋短頭は鍛えられる。
    また、
    大腿二頭筋長頭の筋長は
    ノルディックハムのほうが長くなる。
  • 筋電図のデータから、
    スティッフレッグデッドリフトは
    45度ヒップエクステンション寄り
    プローン(うつ伏せ)レッグカールや
    グルートハムレイズはノルディックハム寄りの
    効果が得られる可能性あり

といったことが言えそうです。

まとめ

ハムストリングを鍛えられる
各エクササイズにおいて
ハムストリングスの中でも
どの部位を鍛えられるかといったことは
変わってくるようです。

効果的なトレーニング、
傷害予防プログラムを組むため
にも、
このあたりのことは把握しておきたいですね!

参考資料

  1. Bourne, MN, Duhig, SJ, Timmins, RG, Williams, MD,
    Opar, DA, Al Najjar, A, et al. Impact of the
    Nordic hamstring and hip extension exercises on
    hamstring architecture and morphology: Implications for
    injury prevention. Br J Sports Med 51: 469–477, 2017.
  2. Bourne, MN, Williams, MD, Opar, DA,
    Al Najjar, A, Kerr, GK, and Shield, AJ. Impact of
    exercise selection on hamstring muscle activation.
    Br J Sports Med 51: 1021–1028, 2017.