上半身トレーニングのメジャーなものとして、
ウエイトトレーニングであればベンチプレス、
自重トレーニングであれば腕立て伏せなどが
挙げられると思います。

トレーニング指導をしていると、
どうしてもそのような
『プッシュ系の種目』に偏ってしまう選手を
多く見かけます。

上半身の種目
(特に肘関節も肩関節も使用する多関節の種目)を
大きく分類すると、
コンセントリックの局面で
肘を伸展する『プッシュ系の種目』と、
肘を屈曲する『プル系の種目』に分けられます。

トレーニングプログラムを作成するうえで、
全身バランスよく鍛えるためには、
この『プッシュ系の種目』と
『プル系の種目』を
バランスよく入れていく必要があります。

プル系の種目の代表的なものとして、
懸垂が挙げられます。

この懸垂という種目ですが、
一言に言っても色々な実施方法があり、

  • 手幅
  • グリップの握り方

2点だけでなく、
負荷のかけかたのプログレッションや
リグレッションの方法も多岐にわたります。

本日はその中でも
『グリップの握り方』に焦点を当てた
研究を紹介していきます。

懸垂のグリップによるEMGの違い

Dickieらは
トレーニング経験のある男性19名を対象に、
懸垂の各グリップで
各筋のEMGにどのような違いがあるかを
検証しました。

グリップは

  • オーバーハンド(親指が内側にくる握り)
  • ニュートラル(親指が手前にくる握り)
  • アンダーハンド(親指が外にくる握り)
  • ローププルアップ
    (2本のロープをニュートラルグリップで握る)

4種類で各筋のEMGを比較しました。

その結果、
ニュートラルグリップと比較して、
オーバーハンドグリップのほうが
僧帽筋中部のEMGが有意に大きいことが
示されました。

また大胸筋のEMGに対する広背筋のEMGは
ローププルアップ、アンダーハンド、
ニュートラルグリップでは
±15%程度だったものの、
オーバーハンドグリップにおいては
広背筋のEMGは大胸筋のEMGに対して
70%ほど大きくなっています。

広背筋と大胸筋のEMGの比率に関しては
統計的な検証はされていないものの、
総合的に考えてオーバーハンドグリップは
他のグリップに比べて
全体的に背中の筋(僧帽筋中部、広背筋)を
より使っているのではないかということが
推察されます。

まとめ

懸垂で鍛えるターゲットを背中に置いた場合、
様々なグリップがある中でも
特にオーバーハンドグリップが
適していると言えそうです。

一方でこれは経験則になりますが、
オーバーハンドグリップで
適切なフォームの懸垂を実施するのは
少し難易度が高いです。

もしフォームが崩れそうなら
最初のうちはアンダーハンドグリップで実施したり、
オーバーハンドグリップでも
バンドや徒手での補助をつけて
実施するのが良いでしょう。

どのようなトレーニングも
適切な方法はその選手のレベルによって異なるので、
今回の情報を元に、
選手のレベルも分析して
総合的に考えながら
懸垂を実施していってみてください!

参考文献

  1. Dickie, JA, Faulkner, JA, Barnes, MJ, and Lark, SD.
    Electromyographic analysis of muscle activation during
    pull-up variations. J Electromyogr Kinesiol 32: 30–36, 2017.
    Available from:
    http://dx.doi.org/10.1016/j.jelekin.2016.11.004