前回の記事では、
腕立て伏せをベンチプレスと比較して

  • 体幹部を安定させる必要性
  • 肩甲骨の動き
  • 種目のバリエーション

3点に違いがあることを解説しました。

一方で腕立て伏せをやり込むことで
ベンチプレスの重量が向上することもあるように、
お互いの種目には互換性もあります。

実際に、
腕立て伏せとベンチプレスの効果を
比較した研究でも、
腕立て伏せを行った群においても
ベンチプレスの1RMの向上が認められています。

この互換性を活かすためにも、
お互いの種目の負荷を
ある程度換算できることも必要でしょう。

今回は腕立て伏せで上肢にかかっている負荷と、
バリエーションによる負荷の違いについて
研究も交えながら紹介していきます。

腕立て伏せで上肢にかかる負荷

Ebbenら(2011)の研究(1)によると、
通常の腕立て伏せを行う際に
手にかかっている荷重は
体重の64±4%程度であることが
報告されています。

手にかかっている体重が64%ということは、
腕立て伏せを行う際には
自体重の2/3弱の力で
身体を支えていることになります。

※下降局面・上昇局面を通して
発揮している力は変化しますが、
ここでは無視をして考えます。

つまり、
体重60㎏の選手であれば
約40㎏のベンチプレスを行っているのに
近い負荷が上肢にかかっていることになります。

もちろん、
体幹部を安定や全身の協調性も
必要になってくるので、
ベンチプレス40㎏と
まったく同じ効果があるかというと
そうではありませんが、
上肢の負荷に着目する際には
良い指標となるでしょう。

また、
膝立ち(膝を屈曲して膝を地面についた状態)での
腕立て伏せでは
体重の41±6%の力が手にかかっている
というデータもプログレッションを考えるうえでは
役立ちます。

膝立ちでの腕立て伏せは出来るけど
通常の腕立て伏せは
フォームが崩れるという選手であれば、
膝立ちの状態で
背中に体重の10%の重りを乗せることで
ちょうど中間の負荷になり、
スムーズにプログレッションが
出来るかもしれません。

その他のバリエーション

負荷を減らす方法以上に、
腕立て伏せの負荷を増やすバリエーションは
多くあります。

代表的なものが

  • 回数を増やす
  • 背中に重りを乗せる(orペアで背中を押す)
  • 台に足を乗せる
  • ジャンプする

などがあります。

回数を増やすプログレッションでは
総負荷を上げることで
より効果的に筋肥大を促す効果がありますが、
最大筋力向上という点においては
限界があるでしょう。

一番単純に強度を高める方法は
背中に重りを乗せたり、
ペアで背中を押す方法です。

重りを乗せる位置もポイントです。
肩甲骨のあたりに乗せることで
ダイレクトに上肢に負荷をかけられる一方で、
腰のあたりに重りを乗せることにより
体幹部(腰部の抗伸展の出力)に
負荷をかけることが出来るでしょう。

台に足を乗せることでも負荷を高められます。
Ebbenらの研究では
61㎝の台に足を乗せることで、
体重の74±2%の負荷がかかっていたことが
報告されています。

しかしながら台の高さが高くなると、
腕で押す方向も違ってきます。
しかし、
インクラインベンチプレスのような方向への
負荷がかかるので、
あえてそこをしたバリエーションとしても
使えるかもしれません。

ジャンプをすることで
パワー向上の効果も期待出来ますし、
パワーだけでなく発揮している力も大きくなるので
筋力向上にも効果は高まるでしょう。

まとめ

腕立て伏せと一言にいっても
非常に多様なバリエーションがあります。

是非これらを整理して有効に活用してください!

参考文献

  1. Ebben, WP, Wurm, B, Vanderzanden, TL, Spadavecchia,
    ML, Durocher, JJ, Bickham, CT, et al. Kinetic analysis of
    several variations of push-ups. J Strength Cond Res 25:
    2891–2894, 2011.
  2.  Kikuchi, N and Nakazato, K. Low-load bench press and
    push-up induce similar muscle hypertrophy and
    strength gain. J Exerc Sci Fit 15: 37–42, 2017.
    Available from:
    http://dx.doi.org/10.1016/j.jesf.2017.06.003