『ウエイトトレーニングをすると
動かした筋肉は固くなる』

過去にこう思われていた時代もありますが、
徐々にこういった迷信は
解けてきたのではないでしょうか。

ウエイトトレーニングを行うことで、
しっかりと大きな関節角度で動かした筋肉は
むしろ柔軟性が向上します。

これは
過去に紹介したブログ記事の内容ですね。

柔軟性は
スポーツを行ううえでは重要な要素となります。

野球のように
ボールに力を加えるスポーツであれば、
胸郭や肩甲帯の柔軟性が
ボールに与えられる力積に影響するでしょうし、
バスケットボールやサッカーに多い
膝蓋腱炎のリスクファクターとしても
足関節や大腿部の柔軟性が挙げられています。

ではその柔軟性を向上するための手法として、
ウエイトトレーニングは
ストレッチに匹敵するほど有効なのでしょうか。

またはウエイトトレーニングで
柔軟性が向上するといえど、
その効果はストレッチには及ばないのでしょうか?

筋力トレーニングvsストレッチ

Afonsoらは、
2021年5月までに発表された、
筋力トレーニングとストレッチの柔軟性への
効果を比較したランダム化比較試験を収集し、
メタ解析を行いました。

その結果11個の研究が採用され、
筋力トレーニング群vsストレッチ群の柔軟性への
Effect Sizeは-0.22
(95%CI:-0.55~0.12、p=0.206)と
有意差は認められませんでした。

※ES(Effect Size)の数値がマイナスだと
ストレッチのほうが効果あり

また、
バイアスのリスクが高い研究を除外した解析でも
ES=-0.027
(95%CI:-0.286~0.231、p=0.836)と
同様の結果を示しました。

この研究から考察出来ること、まとめ

筋力トレーニングには
ストレッチと同等の柔軟性改善効果が
あることが示されました。

これは意外な結果かもしれませんが、
『伸長強度』という観点から見ると
納得が出来ます。

ストレッチのほうが手軽に筋肉を伸長出来る分、
長い時間での実施も可能です。

一方で、ストレッチによる柔軟性向上においては
ストレッチの強度(伸長の強さ)が大きいほど
効果が高いということが
明らかになっています。

筋力トレーニングのほうが
自体重のストレッチよりも
他動的に加わる力は大きいので、
筋の伸長の強度は高くなりますよね。

そう考えると
持続的に筋を伸長出来るストレッチと比較して
筋力トレーニングが同等の効果があったことも
不自然ではありません。

一方で、
トレーニングの行い方も非常に重要になります。

Fatourosらの研究においては、
ウエイトトレーニングを実施したときの
関節角度の大きさが
柔軟性の獲得に影響を与えたことが
示されています。

つまり柔軟性の獲得が目的であれば、
ボトム近くまでしゃがむスクワットのように
しっかりと大きな範囲での運動を
行う必要があるということです。

意外と奥が深い『柔軟性』

是非深堀りしてこれからも学んでいきましょう!

参考文献

  1.  Afonso, J, Moscão, J, Rocha, T, Zacca, R, Martins, A,
    Milheiro, A, et al. Strength training is as effective as
    stretching for improving range of motion:
    A systematic review and meta-analysis.
    metaArXiv 1–52, 2021.Available from:
    https://inplasy.com/inplasy-2020-9-0098/
  2.  Backman, LJ and Danielson, P. The American Journal of
    Sports Medicine Low Range of Ankle Dorsiflexion
    Predisposes for Patellar Tendinopathy in
    Junior Elite Basketball Players. , 2011.
  3. Fatouros, IG, Kambas, A, Katrabasas, I, Leontsini, D,
    Chatzinikolaou, A, Jamurtas, AZ, et al. Resistance training
    and detraining effects on flexibility performance in the
    elderly are intensity-dependent.
    J Strength Cond Res 20: 634–42, 2006.Available from:
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16937978
  4.  Kataura, S, Suzuki, S, Matsuo, S, Hatano, G, Iwata, M,
    Yokoi, K, et al. Acute effects of the different intensity of
    static stretching on flexibility and isometric muscle force.
    J Strength Cond Res 31: 3403–3410, 2017.
  5.  Witvrouw, E, Lysens, R, Bellemans, J, Cambier, D, and
    Vanderstraeten, G. Intrinsic risk factors for the
    development of anterior knee pain in an athletic population:
    A two-year prospective study.
    Am J Sports Med 28: 480–489, 2000.