以前の記事で、
柔軟性を構成する要因として

  • 脳のトレランス
  • 筋の物理的・構造的特性

2つが挙げられることをご紹介しました。

また、筋の物理的・構造的特性として

  • 筋の粘弾性
  • 羽状角と筋束長

2つがあることもご紹介しました。

以前の記事は
それら物理的・構造的特性について
詳細に解説していきましたが、
今回はROMの測定方法について解説していきます。

ROMの測定方法

まず前提として、
ROMの測定方法という内容を
押さえる必要があります。

ROMの測定方法として、多くの学術論文では

「他動的に関節を動かし筋を伸長し、
被験者が痛みや不快感を訴えたところ
orその直前の角度をROMとする」

といったものを用いています。

スティフネスの測定方法

またROMとは別に
『スティフネス』という指標があるのですが、
これは筋・腱を他動的に伸長するのに
どのくらいの力が必要かというものになります。

このスティフネスは、
トルクアングルカーブの傾きから
算出されることが多いです。

例えば、
股関節屈曲位で
他動的に膝関節を20°伸展したときに、
受動的トルクが30Nm上がってとしたら
(筋が伸長して押し返す力が上がったとしたら)、
30Nm÷20°=1.5Nm/°となり、
この数値がトルクアングルカーブの傾き
=スティフネスになります。

つまり、スティフネスが高いほど
筋は伸びづらいということになります。

ROMとスティフネスの関係

ROMとスティフネスの定義は紹介しました。

スティフネスが低下すると、
ROMもそれに伴って向上することも多いです。
これはイメージしやすいですよね。

一方で、
スティフネスが向上していないのに
ROMが向上する場合もあります。

むしろストレッチによる
長期的なROMの向上には、
スティフネスの低下を伴わないケースが
多いことが明らかになっています。

ストレッチによるROM、スティフネスの変化

これはトレーナーをされている方は
実感されていると思いますが、
選手の筋を数十秒~数分ストレッチをすると、
筋を伸長するときの抵抗感は減ってきますよね?

これがストレッチによるスティフネスの低下です。

研究においても、
ストレッチによって
直後のスティフネスが低下することは
明らかになっています。

一方でFreitasらは、
ストレッチの中長期的な介入が
慢性的なROMや筋スティッフネスに
どう影響を与えるのかについて
過去の研究をまとめてメタアナリシスを
行いました。

その結果、
ストレッチプログラムの実施は、
ROMを増加させるもの、
慢性的なスティフネス
(トルクアングルカーブの傾き)の変化は
もたらさなかったことが報告されています。


(Freitas et al., 2018より)

つまり、
ストレッチの後に急性的に
スティフネスは低下するものの、
慢性的な変化はもたらさない
ということになります。

一方で、
このメタアナリシスで採用された研究の
平均介入期間は5週間程度です。

そのため、
5週間程度の中期的な介入では
スティフネスの変化は起きなかったが、
それ以上の長期的な介入になると
どうなるか分からないとも言えます。

ここは今後の研究に期待ですね。

では、
スティフネス以外の何が
ROMの増加をもたらすのかというと、
それが「ストレッチトレランス」です。

ここについては
また次回詳しく解説していきます!

参考文献

  1. Freitas, SR, Mendes, B, Le Sant, G, Andrade, RJ,
    Nordez, A, and Milanovic, Z. Can chronic stretching
    change the muscle-tendon mechanical properties?
    A review. Scand J Med Sci Sport 28: 794–806, 2018.
  2.  Konrad, A and Tilp, M. Increased range of motion
    after static stretching is not due to changes in muscle
    and tendon structures. Clin Biomech 29: 636–642,
    2014.Available from:
    http://dx.doi.org/10.1016/j.clinbiomech.2014.04.013