筋の柔軟性を測定するときに、
関節ROMの角度や
特定の部位から床までの距離などを
数値として記録するかと思います。

それらの測定は、

  • 筋が伸長した
  • 関節が動いた

などの結果を記録したものになるのですが、
実は柔軟性というのは思った以上に
複数の要因が絡んだものなのです。

大きく分けると、柔軟性(ROM)を決定する要因は

  • 脳のトレランス
  • 筋の物理的・構造的特性

これら2つだと言われています。

脳のトレランスというのは、
筋が伸長されるときの痛みへの耐性です。

筋の構造的特性(いわゆる硬さ)が
改善していない場合でも
ROMの改善は起こることが多いです。

今回は、
2つ目の要因にあたる筋の構造的特性に
焦点をあてて解説していきます。

筋の物理的・構造的特性

筋の物理的・構造的特性として挙げられるのは

  • 筋の粘弾性(Viscoelasticity)
  • 羽状角と筋束長

これら2つです。

粘弾性という言葉ですが、
これは粘性(Elasticity)と弾性(Viscosity)の
特性を併せ持つということ。

厳密に言えばこの2つも少し違った意味を持つので、
そこも理解する必要があるでしょう。

弾性というのはバネのような力のこと

バネは引き伸ばされる長さが長くなればなるほど、
大きな力でそれを引き戻そうとします。

弾性の違うバネを同じ長さに引き伸ばしたとき、
弾性の大きいバネのほうが
引き戻す力は強くなります。

筋肉も同じような特性を持っており、
筋肉が引き伸ばされたときに
随意的に力を出していなくても
縮むような力を発揮します。

つまり、弾性が低い筋肉のほうが
柔軟性自体は高くなるということになります。

一方、粘性というのはバネのような力ではなく、
粘土のような可塑性を持つ物体の硬さになります。

例えば球体にした粘土を地面に落として
大きな力を一瞬加えても、
地面に当たった面は平らになるものの、
全体が平べったくはなりません。

一方で、
その球体の粘土を手でゆっくり押しつぶすと、
時間をかけて平らになっていきます。

粘性を持つ組織というのは、
このように速い速度の外力で
より抵抗性が増すという特徴があります

筋肉は
「弾性」と「粘性」を合わせた粘弾性を持つ
組織になります。

バネのように弾性しか持たない組織だと、
ストレッチをしていても筋の張力は変わりませんが、
筋は粘性も併せ持つ組織であるため、
ストレッチ中に段々と張力が落ちていきます。

ただ一方で、
長期的なストレッチの介入で
筋の粘弾性
(正確には受動的トルクから
算出したスティッフネス)は変化しづらいようで、
この要素に関する研究は
まだ追っていく必要がありそうです。

筋の粘弾性に加えて、
もう1つの構造的・物理的な筋の特性として
挙げられるのは、筋束長と羽状角です。

紡錘状筋であれば羽状角はほぼ0に近いですが、
羽状筋の場合は腱に対して
筋が斜めに付着しています。

トレーニングの介入等で羽状角が変化する場合、
筋の直列サルコメア数の増加によって筋束長も増加し、
その結果羽状角が小さくなることが
確認されているため、
羽状角の減少≒筋束長の増加と考えて良いでしょう。

この羽状角、筋束長についても
柔軟性の一要因と考えられますが、
こちらもストレッチでの向上は
期待しづらい一方で、
エキセントリックを強調した
ウエイトトレーニングでは
ROMと共に改善が認められているようです。

まとめ

筋の物理的・構造的特性は

  • 筋の粘弾性(Viscoelasticity)
  • 羽状角と筋束長

これら2つが挙げられます。

柔軟性に関する要素の一部を取り出すだけでも
なかなか複雑になってきます。

こういった基礎知識が応用を生むので、
しっかりと抑えておいたほうが良いでしょう!

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