一時期の流行りよりかは少し落ち着いてきたかも
しれませんが、未だに巷で人気の
「体幹トレーニング」

なんだか流行っているし、
やりたがっている選手も多いから、
とりあえず体幹トレーニングを指導してます!
………なんてトレーナーさんはいませんよね?

今回は、実際の研究例も紹介しながら
体幹トレーニングについて考えてみます。

体幹とは?

そもそも体幹とは何か?が分からないと
体幹トレーニングについても考えられないので、
ひとまずネット辞書でその意味を調べてみました。

  • デジタル大辞泉
    体の主要部分。胴体のこと。
    また、その部分にある筋肉。コア。
  • 大辞林
    人間の胴。人体の主要部分。

つまり、胴、胴体のことのようですね。
では「胴」の意味をまた調べてみると、

  • 大辞林
    動物の頭・手足・尾を除いた、
    体の中心をなす部分。胴体。

とのことです。

良く聞く体幹トレーニングを行う意義としては、
「いくら脚で大きな力を発揮しても、
体幹が弱ければその力は伝わらない」
といったものを耳にします。

なんだかもっともらしいですよね。

では、体幹トレーニングを行うと
パフォーマンス(スプリント、ジャンプなど)は
高まるのでしょうか?

体幹トレーニングがパフォーマンスに与える影響

Reedら*2は、
体幹トレーニングがパフォーマンスや身体能力に
どのような影響を及ぼすかを検討した
研究を集めたシステマティックレビューを
発表しています。

通常トレーニングに体幹トレーニングを加えた群、
加えなかった群で比較研究が多かったのですが、
多くの研究で、
スプリントスピード、ジャンプ力向上への
体幹トレーニングの効果は認められませんでした。

一方で、バットのスイングや
ハンドボールの投球スピードなど、
回旋系の動作パフォーマンス向上には
体幹トレーニングが効果を示したとされています。

体幹トレーニングの分類

このような結果の差は、
体幹トレーニングの種類と競技特異性
影響をうけていると考えられます。

まず体幹の動作というのは

  • 屈曲
  • 伸展
  • 側屈
  • 回旋

に分けられます。

一方、体幹は、
競技によっては動的に活動する必要もありますが、
四肢の力を伝えるために固定することが
求められる場合もあります。

例えば、体幹(腰椎)が伸展しないように
体幹筋が静的に出力することを抗伸展といい、
出力の方向は屈曲になります。
(屈曲筋が働くことで伸展することを抑える)

このような静的な筋収縮を先程の分類に
当てはめると、以下のようになります。

  • 屈曲(抗伸展)
  • 伸展(抗屈曲)
  • 側屈(抗側屈)
  • 回旋(抗回旋)

※( )内が静的な筋収縮

スクワットやデッドリフトなどの
一般的なウエイトトレーニングでは、
主に伸展(抗屈曲)の能力が鍛えられます。

また、オーバーヘッドスクワットなどの
バーベルを高い位置で保持した
ウエイトトレーニングでは
屈曲(抗伸展)の筋活動が増加することも
知られています*1

言い換えると、
ウエイトトレーニングでも
体幹の矢状面(屈曲伸展)の動きに関わる
体幹のトレーニングはできている
ということになります。
(割合としては伸展>屈曲かもしれませんが)

実際に、スクワットの重量が向上するほど
矢状面のパフォーマンスである
スプリントスピードが向上する
ことも示されています*3

一方で、ウエイトトレーニングには
回旋系の動きが少ないため、
先ほどの研究でも示された通り、
回旋系の体幹トレーニングが
回旋系の動作(スイングや投球)の
パフォーマンスを向上させたのかもしれません。

まとめ

体幹トレーニングと一言に言っても、
どの方向の運動かによって
まったく違うものになります。

アスリートが使える時間は限られているので、
競技特性も含めて本当に必要なのかを考えて
トレーニングに取り入れましょう!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考文献

  1. Aspe, RR and Swinton, PA.
    Electromyographic and Kinetic Comparison of
    the Back Squat and Overhead Squat.
    J Strength Cond Res 28: 2827–2836, 2014.
    http://search.ebscohost.com/login.aspx?direct=true&db=s3h&AN=98785613&site=ehost-live%5Cnhttp://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=00124278-201410000-00017
  2. Reed, CA, Ford, KR, Myer, GD, and Hewett, TE.
    The effects of isolated and integrated “core stability” training
    on athletic performance measures.
    Sport Med 42: 697–706, 2012.
    http://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=00007256-201242080-00005
  3. Seitz, LB, Reyes, A, Tran, TT, de Villarreal, ES,
    and Haff, GG.
    Increases in Lower-Body Strength Transfer Positively
    to Sprint Performance:
    A Systematic Review with Meta-Analysis.
    Sport. Med. 44: 1693–1702, 2014.