足を速くするにはどうすれば良いか?

以前の記事で、
ジャンプやスプリントの能力を高めるためには、
ベースとなる筋断面積、筋力、パワーを
高める必要があることを説明しました。

では、スクワットなどの
ウエイトトレーニングを行っておけば
足は速くなるのでしょうか?

ウエイトトレーニングvsスプリントトレーニング

ウエイトトレーニングを行った場合と
スプリントトレーニングを行った場合とでは、
どちらのほうが足が速くなるのでしょうか?

Rumpら1は、
様々な研究を集めて分析した結果、以下のように
スプリントトレーニングが
ウエイトトレーニングよりも
スプリントスピードが向上した
ことを示しました。

~10m ~20m ~30m 31m~
スプリント

トレーニング

0.92* 0.71* 0.71* 1.32*
筋力

トレーニング

0.33* -0.23 -0.23 0.55*

数値はES、マイナスはタイムの向上を示す
*:p<0.05

この結果から、
「じゃあウエイトトレーニングをやるよりも
スプリントトレーニングをやってたほうが
いいんじゃないの?」
なんて発想になるかもしれませんが、
そんなことはありません。

確かにスプリントスピードに直結するのは
スプリントトレーニングです。

これは良く考えたら当たり前のことですよね。

スクワットなどの筋力トレーニングでは
いくら筋力は高まっても
スプリントという動作の中で力を発揮する能力が
そのまま身につくわけではないので。

しかし、スプリントトレーニング『だけ』を
行っていてもいずれその伸びには
頭打ちが来るはずです。

前回の記事で、この図を用いて、
筋断面積(筋肉量)も向上させないと
筋力が頭打ちになる、
言い換えると筋力発揮のベースが筋肉量である
ということを紹介しました。

そしてその筋力の上に乗っているのがパワー、
その上に乗っているのがスプリントスピードなどの
各体力といったイメージです。

つまり
直接的にスプリントスピードを向上させるには
スプリントトレーニングが必要だけど、
長い目で見ると
ベースとなる筋力を向上させることも
必要不可欠だということです。

筋力向上とスプリントスピードの関係

実際にトレーニングによる筋力の向上と、
スプリントスピードの向上の関係性についても
研究がなされており、
トレーニングによるスクワットの重量の増加率と
スプリントスピードの増加率の間には
強い相関も認められています※2

動きの質をトレーニングで高める重要性も
近年うたわれていますが、
筋力をいかに向上させるか
(≒スクワットの重量をどれだけ上げるか)
といったところにも重点を置かなければ
いけないことが、この研究からも分かります。

もちろん、悪いフォームで重量を上げていけば
怪我のリスクがありますが、
フォーム『だけ』にこだわり、重量を求めなければ
スプリントスピードの向上には繋がりづらい
ということです。

まとめ

スプリントスピードを向上させようと思ったら、
最も直結するのはスプリントトレーニングです。

選手の走るフォームが悪ければ
そこを修正するような指導をしたり、
ドリルを行うべきでしょう。

スレッド走やタイヤでの負荷をかけた
スプリントも効果的です。

しかし、
そのようなスプリントトレーニングだけでなく、
ベースとしての筋力向上も欠かせません。

良いフォームと両立しながら
スクワットなどの重量も求めましょう。

是非スプリントスピード向上のプログラムを
組むときの参考にしてください。

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考文献

  1. Rumpf, MC, Lockie, RG, Cronin, JB, and Jalilvand, F.
    Effect of Different Sprint Training Methods on Sprint
    Performance Over Various Distances: A Brief Review.
    J Strength Cond Res. 30(6):1767-1785, 2016.
    https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26492101
  2. Seitz, LB, Reyes, A, Tran, TT, de Villarreal, ES
    and Haff, GG.
    Increases in Lower-Body Strength Transfer Positively to
    Sprint Performance:
    A Systematic Review with Meta-Analysis.
    Sport. Med. 44: 1693–1702, 2014.