基本的なウエイトトレーニング、
バックスクワットやデッドリフトは、
主に矢状面上での動きが
メインになってきますよね。
一方で、
カッティングやターン動作などでは、
切り返しの局面では
前額面の動きが大きくなります。
そのため、
選手も指導者も、
『方向転換動作のパフォーマンスを高めるために、
中殿筋などの前額面の動きを制動する筋肉の出力を
向上させるようなトレーニングが重要だ!』
という発想になるのも頷けます。
昨今では、
「ファンクショナルトレーニング」の台頭もあり、
前額面上や矢状面上のエクササイズの重要性も
叫ばれているのもあって、
ベーシックなバックスクワット等よりも、
片脚でのエクササイズや、
前額面上に負荷をかけたエクササイズを、
中心に実施しているケースも散見されます。
もちろん、
そのアイディア自体の否定はしないのですが、
前額面上の動きのパフォーマンスこそ、
矢状面の関節トルクが重要であるということも
知っておかなければなりません。
今回は、
“トレーニングプログラム立案をするうえで、
非常に重要なバイオメカニクスの知識”について
ご紹介いたします。
カッティング動作と各関節トルクの関係
Inabaら(2013)は、
様々なカッティング動作を様々な負荷で行い、
そのときの関節の動態を分析しました。
具体的には
左脚踏切のサイドステップ課題について、
着地の距離を身長の20%~100%の9つで実施。
指定の距離まで
一歩で側方にジャンプする
というものです。
そのときの股関節、膝関節、
足関節の関節角度・トルクを算出しました。
その結果、以下のような結果を示しました。
・股関節伸展トルク
身長の20%の距離から
身長の100%の距離にかけて増加
・膝関節伸展トルク
身長の20%の距離から
身長の60%の距離にかけて増加
・足関節底屈トルク
身長の20%の距離から
身長の50%の距離にかけて増加
また、
股関節外転トルクは
距離が増加しても
大きな変化は見られませんでした。
一方で、
股関節外転角度については
距離の増加とともに増大し、
それに伴って
地面反力(GRF)の角度も
斜めに傾くと示されました。
ここから分かることは、
この研究のような
サイドステップの運動課題において、
横方向の推進力を獲得するためには
股関節の外転トルクを発揮するというよりは、
股関節を外転位にした状態で
下肢三関節の伸展トルクを大きくし、
側方へのGRFを大きくする
といった戦略が取られているということです。
股関節が外転位である
=股関節外転トルクを発揮しているではない
というところには注意が必要です。
まとめ
もちろん、
股関節外転筋力を高めるためのトレーニング
というのも様々な場面で必要になってきます。
しかしながら
「横方向の動きだから
身体の側面を鍛えればいいや」
といった短絡的な考えにはならないように
注意が必要です。
また、
下肢三関節の伸展の出力が動作の中で
大きくなったからといって、
「単純にバックスクワットなどをすれば良いか?」
という話になると、
そうとも限りません。
下肢三関節の伸展の力を発揮しているといっても、
バックスクワットとカッティングでは
動作課題が大きく異なるので、
スクワットなどで鍛えた下肢の力を
より効率的に発揮するために、
側方の動作を強調したトレーニングを実施する
といった観点は必要でしょう。
今回紹介したようなバイオメカニクスの知識は、
トレーニングプログラムを立案するうえで、
非常に重要になってきます。
是非今後のトレーニングの参考にしてください!
参考資料
- Inaba, Y, Yoshioka, S, Iida, Y, Hay, DC, and
Fukashiro, S. A Biomechanical study of side steps
at different distances.
J Appl Biomech 29: 336–345, 2013.
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