トレーニングの王道の種目である「BIG3」

これは、

  • スクワット
  • デッドリフト
  • ベンチプレス

のことを指します。

特にその中でもスクワット
ジャンプ力やスプリントスピードとの
強い関係性も研究で報告されています。
(関連記事へのリンクはこちら

さて、そのスクワットについてですが、
トレーニングを行う際に
いくつか注意点が挙げられます。

行う深さを規定してその深さで行う

トレーニングは
重量×回数×セット数だけでなく、
「動かす範囲」も負荷を決める要因となります。

もちろん、
大きな範囲で動かすほうが
(スクワットの場合深くしゃがむほうが)
負荷は大きく、
小さな範囲で動かすほうが
負荷は小さくなります。

特にきちんとトレーニング指導を受けていない
選手に見られる現象なのですが、
重りを上げていく過程で
動かす範囲が小さくなっていくという現象。

これは実際には強くなっていないのに、
強くなったと勘違いすることにつながります。

例えば最初はスクワットを90kgで、
10の深さで降ろしていたとしましょう。
(この深さの数値は便宜的に示しただけです)

セットを完遂できたらこの時点での筋力の強さは
90kg×10⇒900だとします。

そして次のトレーニングで100kgに挑戦し、
完遂できました。
しかし実は前回のトレーニングよりも
降ろす範囲が狭くなっており、
9の深さでしか行えていません。

そのため強さは100kg×9⇒900と、
実は強くはなっていなかったのです。

この、重くした代わりに動かす範囲を浅くして…
を繰り返すと、
ただ重りを担いで足をチョコンと曲げるだけの
トレーニングの出来上がりです。

これでは強くなっているのか分かりませんし、
強くもなりませんよね?

基本的にはフォームを崩さない範囲で可動域をフルに使って行う

スクワットの深さは以下の図のような
名前で分けられます。

  • Partial SquatもしくはShallow Squat
    浅いスクワット
  • Deep Squat
    深いスクワット

さらに細かく関節の角度で定義すると、

  • Full Squat
    最大限深くしゃがむもの
  • Parallel Squat
    太ももが地面と平行になるまで降ろすもの
  • Half Squat
    膝の角度が90度(180度の半分)まで
    降ろすもの
  • Quarter Squat
    Half Squatと立位の間くらいの
    角度まで降ろすもの

と呼びます。

基本的には、
Deep Squat(ParallelもしくはFull)
で行うことを推奨します。

なぜなら、関節角度特異性といって、
トレーニングでは動かした範囲での筋力しか
身につかないからです。※1

Deep Squatであれば
Partial Squatでの角度を通過するので、
すべての関節角度での筋力が向上します。

しかしPartial Squatでは、
Deep Squatの角度を通過しないので、
狭い関節角度の範囲での筋力しか向上しません。

また、動かす範囲が大きいトレーニングのほうが、
筋肉の柔軟性も向上しやすいといった
メリットもあります。※2

これらのメリットを考えたら、
なるべく可動域をフルに使って
トレーニングをしたほうが良いことが
分かりますよね?

注意点・まとめ

スクワットを行うときの深さを規定すること、
そしてその深さはなるべく深くしたほうが
良いということを説明しました。

しかし2つ注意点があるので注意してください。

トレーニング初心者もしくは
関節可動域が狭いため深くスクワット行うと
フォームの乱れが出る場合

関節の可動域が狭かったり、
トレーニングのスキルが十分でないと、
無理やり深く行うことで
怪我につながる恐れがあります。

その場合は綺麗なフォームを保てる範囲で
深くスクワットを行いましょう。

トレーニング上級者で
深いところの筋力は強いが
浅い関節角度での筋力が相対的に弱い場合

スクワットでは深く降ろしたときのほうが
モーメントアーム(重りと関節の水平距離)が
長くなり、負荷が大きくなります。

トレーニング経験を長く積むと、
逆に浅い関節角度の筋力が
相対的に弱くなるといったことも起こり得ます。

その場合はあえて
Partial Squatを行うというのも
1つの選択肢になるかもしれません。

Deep Squatを
体重の2倍程度の重さを扱えない場合は
まずしっかりDeep Squatでの筋力を
鍛えたほうが良いでしょう。

基本は綺麗なフォームで大きな範囲で。

一方で例外も頭に入れて
トレーニング指導に臨みましょう!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考文献

  1. Hartmann, H, Wirth, K, Klusemann, M, Dalic, J,
    Matuschek, C, and Schmidtbleicher, D.
    Influence of squatting depth on jumping performance.
    J strength Cond Res 26: 3243–3261, 2012.
  2. McMahon, GE, Morse, CI, Burden, A, Winwood, K,
    and Onambélé, GL.
    Impact of range of motion during ecologically
    valid resistance training protocols on muscle size,
    subcutaneous fat, and strength.
    J strength Cond Res 28: 245–55, 2014.