トレーニングプログラム作成の際、
様々な変数の設定について
考えなければいけません。

前編では以下4つの変数について解説しました。

①強度(%1RM、○○RM)
②レップ数
③セット数
④レスト

~前編のまとめ~

  • 最大筋力を高めるために
    神経的な負荷をかけるには強度を高く設定する
  • 代謝ストレスやセッションで扱う総重量を
    高める場合はレップ数を多くする
  • 時間があればセット数を多くすることで
    総負荷を高めることも可能
  • 長いレストは
    次のセットでの強度を維持するのに役立つ
  • 短いレストは代謝ストレスを高め、
    短い時間で筋肥大が出来るというメリットも

※前編の記事をご覧になりたい方はこちら

後編では以下3つについて、まとめていきます。

⑤レンジ(降ろす深さ)
⑥テンポ
⑦各セットのフィニッシュのルール

⑤レンジ(降ろす深さ)

筋肥大のキーポイントは、
いかに筋肉に『仕事』をさせるか。

ここで言う仕事は物理学の用語であり、
『力』×『移動距離』を表します。

『力』は基本的に扱う重りの重さで決まります。
(爆発的な挙上をする場合や、
挙上しきる部分での減速局面など、
出している力は厳密には変化しています。)

一方で、
バーベル等の『移動距離』は
レップ数×セット数×重りを動かす範囲
決まります。

つまり同じレップ数、セット数であっても、
動かすレンジで仕事量が変わるということに
なります。

実際、
ハーフスクワットvsフルスクワットを
比較した研究ではフルスクワットのほうが
筋肥大への効果が大きかったことが
報告されています。

一方で、
仕事の一要因である『移動距離』を伴わない
アイソメトリックなトレーニングでも
筋肥大が起きることが報告されているので、
仕事だけでなく
筋肉が張力を発揮している時間
(TUT:Time Under Tension)も
重要なのかもしれません。

一方で
TUTを高めようと
挙上速度をゆっくりにしてしまうと、
発揮しているパワーは小さくなってしまうため、
パワー向上には繋がらない可能性もあります。

パワー向上が目的の場合は、
速度を低下させたり、
アイソメトリックの収縮でTUTを確保するよりも
仕事量の確保でトレーニング負荷を
高めたほうが良いかもしれません。

⑥テンポ

  • ウエイト挙上時のエキセントリック局面
  • コンセントリック局面のテンポ

いずれも、重要な変数です。

これは上記のTUTと関わってくるのですが、

挙上速度を速くする
⇒大きなパワーを発揮でき、
パワー向上に繋がりやすい

挙上速度を遅くする
⇒TUTが大きくなり、筋肥大しやすい

と考えられます。

実際、コンセントリック局面において、
ゆっくりと動かしたほうが
筋肥大の効果が大きかったという報告もあります。

ただ、そのようなトレーニングでは
パワー向上には繋がりずらいでしょう。

一方でエキセントリックに関しては、
怪我のリスクといったことを考えると、
速い動きは少しリスクがあるかもしれません。

関節に無駄なストレスがかからないよう、
目的とする筋群に負荷を乗せられるスキルが
十分に無いうちは、
エキセントリックの動きは
ゆっくりと行ったほうがベターでしょう。

⑦各セットのフィニッシュのルール

あらかじめ、
そのセットのレップ数を決めるやり方もありますが、

  • 一定の速度の低下
  • 主観的な強度

これら2つに応じて
そのセットを切り上げる方法もありますし、
『つぶれるまで実施する』といった方法も
あります。

速度をモニタリングでき、
かつ効率よくパワーを高めたい場合は、
速度をベースとしたトレーニング(VBT)を
実施するのも良いでしょう。

また、
トレーニングが熟練してきて
何レップ上げられる状態で終了といった判断が
出来るのであれば
RPE法をとるのもありでしょう。

代謝ストレスを高めたい場合や、
何より自分の限界を知るためには、
安全なフォームを身に付けた後に
一度つぶれるまで実施するトレーニングを
実施するのもありでしょう。

後編まとめ

  • 特別な理由がない限り、レンジはフルで行う
  • パワー向上が目的であれば
    コンセントリックは爆発的に挙げるのがベター
  • エキセントリックを速く実施すると
    怪我に繋がる可能性もあり
  • セットのフィニッシュはあらかじめ
    決める方法以外にも様々なものがある

いかがでしたでしょうか。

トレーニングの変数設定というと、
だいぶ基礎的なものになりますが、
掘り下げていくと深いものです。

是非今後のプログラム作成の参考にしてください!

参考文献

  1. Farthing, JP and Chilibeck, PD.
    The effects of eccentric and concentric training at
    different velocities on muscle hypertrophy.
    Eur J Appl Physiol 89: 578–586, 2003.
  2.  K, B, H, L, S, K, S, M, M, B, and T, R. Effect of range
    of motion in heavy load squatting on muscle and
    tendon adaptations Bloomquist.
    Eur J Appl Physiol 113: 2133–2142, 2013.
  3. Oranchuk, DJ, Storey, AG, Nelson, AR, and Cronin, JB.
    Isometric training and long-term adaptations:
    Effects of muscle length, intensity, and intent:
    A systematic review. Scand J Med Sci Sport 29:
    484–503, 2019.