前回の記事では、
筋力を向上させるメカニズムとして
- 筋断面積の増加
- 神経の機能の向上
- 筋線維組成の最適化
以上3点を挙げました。
今回は、
様々な競技特性から、
どのような筋力向上の方法がそれぞれに、
適しているのかについて触れていきましょう。
筋力向上の効果が見込める競技
筋力向上の効果が見込める競技は
大きく分けて
①とにかく筋肥大が必要な競技
②筋肥大も必要だが、
体重あたりの筋力を高めることが必要な競技
③筋肥大はなるべくせずに、
筋力を高めることが必要な競技
の3つに分類できます。
①は主にはボディビルディングですね。
どれだけ筋肉が美しく大きいかを競うため、
筋力というのは直接的には関係ありません。
一方で、
筋力が大きいことで、
トレーニング強度は上げられるので、
間接的には貢献するかもしれません。
多くの競技はおそらく②に当てはまるでしょう。
もちろんその中でも、
①寄りの②(アメフトのライン等)や、
③寄りの②(サッカーのミッドフィルダー等)など
競技特性に応じた違いはあると思います。
③はマラソンなど持久系の競技です。
持久系の競技は
体重あたりのVO2Maxが、
非常に重要になってくるので、
無駄に身体が重いことが
パフォーマンス発揮にとって
マイナスになってしまいます。
先ほど示した図で考えると、②や③の競技ほど、
- 神経の機能の向上
- 筋線維組成の最適化
以上2点が重要になってきます。
どのようなトレーニングが適切か
低強度のトレーニングでも
筋肥大は可能ですが、
神経の機能を高めつつ筋肥大をするためには
高強度のトレーニングのほうが向いています。
言い換えると、
10Repなど比較的高回数で実施するよりも、
5Repや3Repなどの少ない回数で、
大きな重量を扱うトレーニングが適切です。
なおかつ③のように
筋肥大をあまりさせたくない競技であれば、
高強度のウエイトトレーニングを実施しつつ、
体重が増加しないように摂取エネルギーを
コントロールすれば良いでしょう。
さらに特に瞬発系の競技であれば、
速筋線維の割合が減らないような工夫を
する必要があります。
前回の記事でも紹介した通り、
基本的にウエイトトレーニングを実施すれば、
速筋線維(MHC-TypeⅡX)割合は減っていきます。
それを防ぐためには
ウエイトトレーニングを
・VBTで実施
・ギリギリの重量設定にしない
といったことが有効です。
速筋線維を減らさないトレーニング
VBTとはVelocity Based Trainingの略で、
あらかじめ実施回数を決めるのではなく、
トレーニング中の動作速度が一定のレベルまで
低下した時点でそのセットを切り上げる方法です。
例えば、Blancoらの研究(1)では
・挙上速度が40%低下したらセットを切り上げる群
(40%低下群)
・挙上速度が20%低下したらセットを切り上げる群
(20%低下群)
2つの郡に分けてトレーニングを実施したところ、
20%低下群でTypeⅡXの減少が抑えられ、
ジャンプ力、スクワットの1RMも
有意に向上したことを示しました。
トレーニングボリュームは、
40%低下群のほうが大きかったこともあり、
筋肥大は40%低下群のほうが大きくなりました。
しかしながらこういった方法は、
挙上速度をモニターできる機材がないと
厳しいですよね。
そのため、
もっと簡便な方法として
『ぎりぎりの重量設定にしない』
といったことも似たような刺激を
得ることが出来るでしょう。
まとめ
『筋力』が多くの競技で必要だと言っても、
競技によって必要なものは少しずつ異なってきます。
特に、瞬発力や体重あたりの筋力が
求められるアスリートの指導の際には、
身体能力向上に繋がる筋肥大・筋力向上が
必要ですよね。
是非今回の情報も指導に活かしてください!
参考文献
- Pareja-Blanco, F, Rodríguez-Rosell,
D, Sánchez-Medina, L, Sanchis-Moysi,
J, Dorado, C, Mora-Custodio, R, et al.
Effects of velocity loss during resistance
training on athletic performance, strength
gains and muscle adaptations.
Scand J Med Sci Sport 27: 724–735, 2017.
- Schoenfeld, BJ, Grgic, J, Ogborn,
D, and Krieger, JW. Strength and
hypertrophy adaptations between low- vs.
High-load resistance training: A systematic
review and meta-analysis. J. Strength Cond.
Res. 31: 3508–3523, 2017.
- 投稿タグ
- ウエイトトレーニング, パフォーマンス
SNSでも配信中