トレーニングの目的は、

  • 身体能力の向上
  • 傷害の予防
  • その先につながるパフォーマンスの向上

これら3点にあると思いませんか?

競技パフォーマンスに対しては、
間接的にしか貢献できないので、
その重要性を認識しづらい場合もあるでしょう。

また、
トレーニングの成果を実感するには、
ある程度の期間が必要になってくるので、
それまで辛抱強く続けるためのモチベーションも
必要になってきます。

一方で、
トレーニングをやり続けても
成果が得られない場合、
アスリートは

『トレーニングなんかやっても仕方ないな』

といった思考に陥る場合も
十分にあり得ます。

今回はそうならないために、
“トレーナーが持っておくべき心理学的知識”
についてご紹介します。

学習性無力感

1967年、ポジティブ心理学の分野で知られる
アメリカの心理学者
マーティン・セリグマンによって、
ある実験が行われました。

それは、
5秒間電気ショックを与えることが出来る
ボックスの中に犬を入れ、
下記のような条件で電気ショックを与える、
といったような実験でした。

【条件】
①電気ショックから逃れることが可能
②脱出を不可能にした状態

その後、脱出が不可能な状況で
電気ショックを与えられたグループにおいては、
脱出可能な状況においても、
脱出する行動が阻害されたことが示されています。

つまり、

『脱出を試みても結局電気ショックからは
逃れられないので、
5秒間黙ってやり過ごすしかない』

といったことを学習してしまったのです。

これを「学習性無力感」と呼んでいます。

この実験は犬によるものですが、
もちろん人間にも潜在的に同じようなことが
起こると考えられます。

トレーニングにおいても、
求める成果が得られなければ
『トレーニングなんかやっても仕方ないな』
となってしまってもしょうがないでしょう。

モチベーションを維持するためには

では、どのようにしたら
学習性無力感に
選手がさいなまれずに済むのでしょうか。

おおまかに分けると

①きちんと効果が出るトレーニングを実施する
②効果を実感できるようなフィードバックをする

の2つでしょう。

①に関してはまず、

  • トレーナーとして深い専門知識をつけること
  • 指導力を磨くこと

といったことが必要になるでしょう。

効果が出ないような根拠のない、
その選手に合ってない欠陥だらけの
プログラムであれば、
いくら頑張っても
成果は出ない可能性が高いです。

②に関してはまず、
『効果を見える化』することでしょう。

例えば、
「瞬発力を高める」という目的があれば、
垂直跳びや立ち幅跳びの数値を定期的に測定し、
フィードバックする必要があります。

また、
垂直跳びや立ち幅跳びに繋がる
間接的な要素(除脂肪体重や最大筋力)を
高める時期であれば、
それが間接的に瞬発力に繋がることを
あらかじめ選手に説明し、
そちらをフィードバックすることも必要です。

具体的には
定期的な体力測定の実施がおすすめです。

測定というと、
気合を入れて何種目も測定する場面を
イメージするかもしれませんが、
選手のモチベーションを維持しながら、
早めに方向修正をするために
簡易的な測定をある程度の頻度で
実施するのが良いと考えられます。

幅跳びのような
特別な機材のいらない測定であれば、
測定場所を数カ所作成し、
同時進行ですぐに測定も出来るのでおすすめです。

1~2か月に1回程度測定できれば
頻度としては十分でしょう。

その数値が高まっていれば
選手のモチベーションアップにつながりますし、
数回の測定でも向上を示さなかった場合は、

  • 栄養
  • 休養
  • プログラム全体の変化
  • 個別対応

など、
何かしらのテコ入れのきっかけにもなります。

まとめ

トレーニングは競技に対して、
間接的にしか貢献出来ませんが、
アスリートにフィードバックするためには
非常に重要なものです

是非プログラムの中身だけでなく、
そういったところにも視点を当ててみてください!

参考資料

  1. SELIGMAN, ME and MAIER,
    SF. Failure To Escape Traumatic Shock. J
    Exp Psychol 74: 1–9, 1967.