筋力を高めるには、

1. 筋自体の形態・特性の変化
(筋断面積、筋線維組成の変化)
2. 神経の機能の向上

以上2点が必要です。

「筋力を高めること」に関するブログ記事はコチラ

 

 






それぞれの要素に焦点を当てた
トレーニングを実施することで、
効果的に筋力を高めることができます。

また一方で、
最大筋力には影響を与えないものの
非常に重要な筋形態の要素として、
『筋線維束長』が挙げられます。

今回は、この「筋線維束長」を
ご紹介します。

筋線維束長とは?

筋線維束長(Fascicle Length)とは、
筋線維の長さを表した指標で、
主に超音波などを用いて計測されます。

特に羽状角においては重要な要素であり、
筋線維束長が長いと

  • 肉離れがしづらくなる
  • パワー(特に速度の要素)が大きくなる

といった特性があります。

筋線維束長=腱を含む
筋腱複合体の起止―停止の距離が長さ、
というわけではなく、
主に羽状角の角度などに影響を受けます。

筋線維束長は、
これは個人間のばらつきもある一方で、
トレーニング介入でも変化をすることが
明らかになっています。

 

 

 

上記の図で表している通り
羽状角が小さいほど筋線維束長は長くなり、
羽状角が大きいほど筋線維束長は短くなります。

筋線維束長を長くするには?

筋線維束長を長くするには、

1. エキセントリックの負荷をかけること
2. より伸長位での負荷をかけること

が必要になってきます。

Timminsらの研究では、

  • エキセントリックのみのトレーニング
  • コンセントリックのみのトレーニング

これらを
ランダムに振り分けたグループで
それぞれ6週間実施したところ、
コンセントリックのみのトレーニングを
実施したグループは筋線維束長が短くなり、
一方で、
エキセントリックのみのトレーニングを
実施した群では筋線維束長が
増大したことが示されました。

また、McMahonらの研究では

  • 小さなROMでのウエイトトレーニング
  • 大きなROMでのウエイトトレーニング

これらをそれぞれ8週間実施したところ、
大きなROMでトレーニングを実施したほうが
筋線維束長が大きく向上したことが示されました。

現場への応用

ハムストリングの肉離れ予防によく用いられる
ノルディックハムストリングは、
ハムストリングをピンポイントで鍛えるだけでなく、
基本的に
『エキセントリック収縮のみで実施される』
筋線維束長増大にもつながり、
ハムストリングの肉離れ予防に
貢献していると考えられます。

この筋線維束長の変化は、
肉離れ予防だけでなく

  • 筋収縮速度の増加
  • 筋収縮速度の増加によるパフォーマンスの向上

こういったことにもつながる
と考えられます。

また大きなROMを用いた
RDL(ルーマニアンデッドリフト)など、
より伸長位で筋肉に負荷がかかる種目も
筋線維束長増加には貢献すると考えられるため、
筋線維束長増加には非常に有効でしょう。

場合によっては
あえて短いROMで
大きな負荷を扱うということも
有効な時はあるかと思いますが、
やはりウエイトトレーニングは大きなROMで
丁寧に実施するというのが
基本になるのではないでしょうか。

今回の知識も傷害予防・パフォーマンスアップ
のためのトレーニングに活かしてください!

参考文献
1. Kumagai, K, Abe, T, Brechue, WF, Ryushi,
T, Takano, S, and Mizuno,
M. Sprint performance is related to
muscle fascicle length in male 100-m sprinters.
J Appl Physiol 88: 811–816, 2000.

2. McMahon, GE, Morse, CI, Burden,
A, Winwood, K, and Onambélé, GL.
Impact of range of motion during ecologically
valid resistance training protocols on muscle
size, subcutaneous fat, and strength.
J strength Cond Res 28: 245–55, 2014.Available
from: http://journals.lww.com/nscajscr/Fulltext/
2014/01000/Impact_of_Range_of_Motion_
During_Ecologically.32.aspx%5Cn
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23629583

3. Thomas, JB, Brian, F, Stephanie,
B, and Richard, LL. Relationship between
muscle fiber types and sizes and muscle
architectural properties in the mouse hindlimb.
J Morphol 221: 177–190, 1994.Available from:
http://dx.doi.org/10.1002/jmor.1052210207

4. Timmins, RG, Bourne, MN, Shield, AJ,
Williams, MD, Lorenzen, C, and Opar,
DA. Short biceps femoris fascicles and
eccentric knee flexor weakness increase
the risk of hamstring injury in elite football
(soccer): A prospective cohort study.
Br J Sports Med 50: 1524–1535, 2016.
5. Timmins, RG, Ruddy, JD, Presland,
J, Maniar, N, Shield, AJ, Williams,
MD, et al. Architectural Changes of the
Biceps Femoris Long Head after
Concentric or Eccentric Training.
Med Sci Sports Exerc 48: 499–508, 2016.