筋トレを実施すると、
筋力の向上だけでなく筋断面積の増加
期待できますよね。

また、
エキセントリックを強調した
エクササイズを実施すると
筋線維束長の増大、
それに伴う羽状角の低下が起こります。

その変化が筋パワー増加にも
つながると考えられます。

一方でストレッチの目的は何かと聞かれたとき、
一般的には柔軟性の向上や
怪我の予防といった答えが返ってくると思います。

では継続的にストレッチを実施した場合、
筋肉自体はどのような変化を起こすのでしょうか?

今回は、継続的なストレッチ実施を
実施した場合の筋肉の変化について、
お話します。

習慣的なストレッチが筋形態に与える影響

筋肥大のためには
筋肉に刺激を与える必要があります。

Schoenfeld(2010)のレビューでは、
以下3つの刺激が筋肥大には必要だとされています。

この中でも機械的張力に関しては、
筋トレだけでなくストレッチでも
かかりそうな気がします。

実は以前から動物実験においては

『ストレッチを実施することで
筋肥大に関連する反応が見られた』

という報告もなされており、

「では、人間においてはどういう報告が
なされているのか?」

ということを
Nunesら(2020)が系統的レビューで
まとめました。

このレビューでは

  • 羽状角
  • 筋線維束長
  • 筋厚

などの筋形態に対するストレッチの効果を
検証した研究をまとめています。

その結果、
ほとんどの研究でこれら筋形態の変化は
認められませんでした。

筋厚に対する変化(筋肥大)が
認められなかったのは、
ストレッチでは筋の伸長は起こるものの、
スタティックストレッチの場合は
脱力をしてしまっているので、
張力という点では
小さくなってしまうからでしょう。

一方で筋線維束長というと
イメージ的にはストレッチで
大きくなりそうな気もしますが、
実はそうはならないのです。

筋生理学の基礎の話になりますが、
筋肉はアクチンとミオシンなどからなる
サルコメアが直列・並列に並んでいることで
収縮することができます。

この直列のサルコメア数が多いほど
筋線維長は長くなり、
その結果安静時の羽状角も減ると考えられます。

実はこの直列サルコメア数を増やす
(≒筋線維束長を長くする、羽状角を減らす)には
エキセントリックのトレーニングが
有効であることが分かっています。

実際に動物実験でも、
下り坂のようなエキセントリックの刺激を
加えることで、
筋肉の直列サルコメア数の増加が
認められています。

ではストレッチでは何が起きているのかというと
筋組織の構造が変化するというよりも

  • ストレッチ痛への耐性増加
  • 筋硬度の低下

などによる柔軟性の増加が起きていると
考えられています。

そのため、
エキセントリックトレーニングに対する
筋線維束長増加などとはまた違った作用が
働いてます。

まとめ

●筋力トレーニングでは筋断面積が増加する

●特にエキセントリックのトレーニングであれば
   サルコメア数の増加とそれに伴う
   筋線維束長の増大がみられる

●ストレッチでは筋断面積や筋線維束長は
   変化しないが、
   筋硬度の低下やストレッチ痛への
   耐性向上によって柔軟性が増加する

こういった基礎的な情報も、
トレーニング、コンディショニングの
プログラム作成には欠かせません。

是非今後の指導に活かしてください!

参考文献
1. Lynn, R and Morgan, DL. Decline running produces
    more sarcomeres in rat vastus intermedius muscle fibers
    than does incline running. J Appl Physiol 77:
    1439–1444, 1994.
2. Nunes, JP, Schoenfeld, BJ, Nakamura, M, Ribeiro, AS,
    Cunha, PM, and Cyrino, ES. Does stretch training
    induce muscle hypertrophy in humans?
    A review of the literature. Clin Physiol Funct Imaging 40:
    148–156, 2020.
3. Timmins, RG, Ruddy, JD, Presland, J, Maniar, N,
    Shield, AJ, Williams, MD, et al. Architectural Changes
    of the Biceps Femoris Long Head after Concentric or
    Eccentric Training. Med Sci Sports Exerc 48:
    499–508, 2016.