アジリティという言葉、今はスポーツ現場でも
よく耳にしますよね。

ここ十数年で、アジリティについての非常に
多くの研究がなされてきました。

本日はこの『アジリティ』についての
基礎的なことと、現場への応用方法について
紹介していきます。

アジリティとは?

アジリティという言葉自体は昔から存在しました。

しかしその言葉の使われ方が曖昧だということで、
2000年代に入ってからその定義が少し見直され、
近年では
「刺激に対して反応し、
素早く速度・方向を転換する能力」

(Sheppard and Young, 2006)
というふうに、
認知的な要素を含むという形で統一された
認識がされています。

一方で、スポーツ現場で実際に
「アジリティのテスト」として測定される、
Tテスト、プロアジリティ、10m×5などは、
スポーツ科学の世界の定義上は、
厳密に言えば「方向転換スピード」
というものになります。

この
「方向転換スピード」と「知覚・意思決定要素」を
統合した能力が「アジリティ」
になる
といったイメージです。


別にこの知識を元に、スポーツ現場で
知覚・意思決定要素を含まない
方向転換スピードのテストを
「アジリティ」と呼んでいる人に対して
「それは本当はアジリティとは
呼ばないんですよー!
方向転換スピードですよー!」なんて
しょうもないツッコミを入れてほしいわけでなく、
最終的なパフォーマンスに繋げてほしいのです。

※注釈
ちなみに僕も知覚・意思決定要素を含まない
方向転換スピードのテストを
あえて分かりやすいように
「アジリティ」と呼ぶことはあります。
ただ、この記事中は分類が分かりやすいように
正しい定義上の呼び方をしていきます。

アジリティの構成要素をどう指導に還元するか?

上の図で「アジリティ」
「知覚・意思決定要素」「方向転換スピード」
決まるといった話をしました。

「実際の試合では切り返しや動き出しは
相手に反応して行う
ことが多い」ということは、
誰でも知っていることかと思います。

では、実際にこのことは
トレーニングにどう活かせるのでしょうか?

例えば、
「静止姿勢から左右どちらか横方向に
スタートを切る」
といった課題があるとします。

このときに、進む方向が分かっている場合、
おそらく体重はその方向に少しかかった状態に
なりますよね?

一方で、左右どちらかに指導者が指をさして
それにリアクションをしてスタートを切る場合、
どちらにも進めるように、
体重は左右の足に均等にかける形になるでしょう。

このように、
知覚・意思決定要素を含むか否かで、
動作自体も少し変わってくる
ということです。

アジリティを高めるときに、先に
方向転換スピードを高めて、
そこに認知的な負荷を加えていく

といったプログレッションを
することはよく行われています。
しかし上で挙げた例のように何も考えずに行うと、
方向転換の動作とそこに対応するアジリティの
動作が異なった動作になるといったことが
起こりえます。

そのため、
例え方向転換動作のみを取り出して
実施するにしても、
知覚・意思決定要素が加わった状態で、
言い換えれば
実際の試合の中のシチュエーションで「使える」
方向転換動作をトレーニングしていく必要性

認識していなければなりません。

まとめ

今回の記事ではまずアジリティを高めるうえで、
知覚・意思決定要素を考慮して
方向転換スピードを高めなければならない

といったことを紹介しました。

次回は、
「知覚・意思決定要素」と
「方向転換スピード」を
それぞれどう高めていくべきか

紹介していきます!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考資料

J. M. Sheppard & W. B. Young
Agility literature review: Classifications, training and testing
Journal of Sports Sciences,
September 2006; 24(9): 919 – 932