![](https://arkrayathletesupport.com/wp-content/uploads/2019/07/6df49bf8c4a1f9225c84757a3bf730ae.jpg)
体力測定(フィジカルテスト)は多くのチームで
行われていますよね。
実はそれぞれの種目の特性について
理解しておかないと、選手の能力を見誤ったり、
トレーニング効果の判定に関して間違った判断を
くだしてしまうことも多々あります。
運動能力、運動技能、運動体力
体力測定だけでなく、各運動課題について
理解するためには、
- 運動能力
- 運動技能
- 運動体力
その3つに加えて運動パフォーマンス、
パフォーマンス変数について理解しておく
必要があります。
まずは下の図をご覧下さい。
![](https://arkrayathletesupport.com/wp-content/uploads/2019/07/blog_01_physical-fitness-measurement.png)
(杉原, 2003)
この図で示した通り、運動能力の構成因子には、
運動技能と運動体力が挙げられます。
運動体力とは
筋肉の力発揮能力や、最大酸素摂取量など、
生理学的に身体の組織がどれだけ力を出せるかを
表したものです。
一方、運動技能とは、
身体をどのように動かすかと
いったことになります。
どのような運動課題であっても、運動能力は
この運動体力と運動技能によって構成されます。
これはスクワットのような
筋力測定の課題であっても、
バスケットボールのフリースローのような
技術的な課題であってもです。
下肢の筋肉群がまったく同じ力を持っていても
(同じ運動体力でも)、
スクワットのフォームが違えば
(運動技能が異なれば)、
挙上できる重量(運動能力)は
変わってきますよね。
また、各運動課題で求められる
運動体力と運動技能の割合も変わってきます。
![](https://arkrayathletesupport.com/wp-content/uploads/2019/07/blog_02_physical-fitness-measurement-1024x373.png)
もちろんフリースローはスクワットに比べて、
運動技能の果たす役割は大きくなってきますよね。
体力測定では比較的この図の左側にあてはまる、
スクワット、スプリント、長距離走などの
運動課題を通して、
筋力、パワー、最大酸素摂取量などの
そこに対応する運動体力を推察しているのです。
一方で、5mダッシュ、ターンして10mダッシュ、
ターンして5mダッシュなどに代表される
アジリティのテストについてはどうでしょう?
これは図でも示している通り、
他の運動課題に比べると
運動技能が果たす役割は大きく
なりますよね。
例えば、握力とアジリティのテストをそれぞれ、
5回、6回と測定を行っていくと
記録はどうなっていくでしょうか?
おそらく、アジリティのほうが
『慣れ』により記録が良くなっていく
ことが推察されます。
これは、
- アジリティのほうが握力に比べて
運動技能が貢献する割合が高い - 慣れていない課題であれば
運動技能はすぐに高まる - 運動体力はすぐには高まらない
などからこう考えられます。
実際に、
スプリントスピードよりもアジリティのほうが
チーム内での順位変動が激しかったという
データもあります[2]。
アジリティなど
運動技能が大きく関与するテストに関しては、
毎月末に測定し、数値が向上していたとしても、
トレーニング効果が反映されているのではなく、
ただ慣れたから向上していっている可能性もある
ということです。
運動能力と運動パフォーマンス、
パフォーマンス変数
運動能力、運動技能、運動体力について
述べてきましたが、
実は運動能力がそのまま運動課題の測定数値に
現れるとは限りません。
以下の図のように、持っている運動能力に
いくつかのパフォーマンス変数が影響を及ぼし、
運動パフォーマンス(運動の結果、数値)として
表れます。
![](https://arkrayathletesupport.com/wp-content/uploads/2019/07/blog_03_physical-fitness-measurement-1024x486.png)
パフォーマンス変数とは、
運動パフォーマンスに影響を及ぼす
他のすべての要因です。
分かりやすい例で言えば、疲労や気温です。
高い運動能力を持っていても
疲労というパフォーマンス変数のせいで
運動パフォーマンスを発揮できない
かもしれません。
持久系の運動課題(1500m走など)であれば、
気温が高いとパフォーマンスは発揮しづらい
でしょう。
1500m走を夏と冬に測定し、
冬のほうが記録が高くても、
運動体力、運動能力が向上したわけではなく、
ただ気温というパフォーマンス変数が
影響を及ぼしただけということもあり得るのです。
まとめ
体力測定をするうえで、
運動能力、運動体力、運動技能、
パフォーマンス変数、運動パフォーマンスの
関係を理解しておくことは重要です。
数値が向上、低下したように見えても、それは
運動体力が変化したわけでなく、
運動技能が慣れで向上した、
パフォーマンス変数が影響を及ぼした、
という場合が多々あるからです。
体力測定は数値を出すことだけでなく、
その数値をどう読み取るかが大事です。
是非今回の内容を参考にしてみてください。
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
参考資料
- 杉原 隆.
運動指導の心理学-運動学習とモチベーションからの接近-
大修館書店,2003 - Hirose, N and Seki, T.
Two-year changes in anthropometric and motor ability values
as talent identification indexes in youth soccer players.
J Sci Med Sport 19: 158–162
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