科学的なトレーニングを実施する場合、
そもそもの科学的な手法についての
最低限の理解が必要です。

『科学的な手法についての理解』というと、
精巧な実験器具のデータの解釈や、
難解な統計手法についての理解などが
必要に思えるかもしれませんが、
そんなことはありません。

今回は観察研究と介入研究の違いについて
理解していきましょう。

観察研究と介入研究

まずその前に、
観察研究と介入研究の違いについて
おさらいしましょう。

観察研究

その名の通り、
その時点での選手たちのデータを収集し、
分析したもの。

例えば野球選手の

  • 肩の怪我の有無
  • 肩の可動域
  • 肩の筋力
  • 下半身の可動域

などを測定し、肩の怪我の有無と
その他の要素の関連について調べた、
といったものです。

介入研究

介入をした結果の変化や、
介入しなかった群との差を見るものに
なります。

例えば野球選手に
肩の可動域のトレーニングを実施して、
その結果肩の怪我の発生率がどうなったかを
調べたものなどです。

その中でも特に、選手をランダムに
「介入をする選手」
「介入をしない選手(コントロール群)」に
分けて比較するものを
ランダム化比較実験」といい、
単一の研究においては
最もエビデンスレベルが
高くなります。

観察研究の問題点としては、
仮に肩の怪我の有無と肩の可動域に
関連が認められたとしても、
それが疑似相関の可能性がある
ということです。

疑似相関とは

疑似相関の例で極端なものとして、
教会の数が多い地域では犯罪が多い、
というものがあります。

これは一瞬頭をかしげるかもしれませんが、

  • 人口が多い→教会も多くなる
  • 人口が多い→犯罪も多くなる

というと納得ですよね。

第3の要素(ここでは人口)を介して
2つの要素に関連が認められる
ということもあるのです。

肩の怪我についていうと、例えば
肩の怪我をしてない選手ほど
野菜を多く食べていたという
データがあったとしましょう。

では、
野菜を食べることで
肩の怪我を防ぐことが出来るのか?
というと、上記の疑似相関の例と同様に、
「真面目な性格」という第3の要素からなる
見せかけの関係性の可能性があるのです。

観察研究の活用

上記のような話をすると、
「介入研究でないと信頼できない」
と思うかもしれませんが、
そんなことはありません。

そもそも介入研究であっても、
コントロール群を作成していない研究、
例えば『去年は何も介入していなかったけど
今年はこのトレーニングを行ってみました』
といったデザインのものであれば、

  • 去年と今年の練習の違い
  • 試合のスケジュールの違い
  • 実は今年から他のアプローチも
    開始していた(栄養指導など)

といった他の要素の影響を排除出来ません。

また、介入試験にするには難しい
大規模な被験者数であっても
観察研究であれば実施可能な場合も
あります。

研究デザインがきちんと考えられている
研究であれば、その限界を理解したうえで
参考にすれば、非常に役立つデータに
なります。

特にシーズン前のスクリーニング等の
データを活用した大規模な前向き研究
私自身も参考にする場合も多いですし、
そういったデータから着想を得て
新たな介入研究も行われたりもします。

次回は上記で挙げた
『前向き研究』『後向き研究』
違いについてもう少し堀り下げてご説明し、
現場で役立つデータも紹介していきます!