前回の記事では、水分不足のデメリットとして

  • 持久力の低下
  • 筋力、パワーの低下
  • 認知機能の低下

などを紹介しました。

そのため、
普段の生活や
運動前・中・後の水分補給が重要なのですが、

「どのくらいの水分を摂取するか?」

ということに加えて、

「水分と何を合わせて摂取するか?」

ということも非常に重要になってきます。

今回は、

●エネルギー補給
●効率的な水分の吸収

2つの観点で、
水分に何を加えて摂取するべきかを
考えていきます。

エネルギー補給

運動も長時間に及べば、
身体のエネルギーが徐々に枯渇してきますよね。

人間がエネルギーとして利用できる栄養素は
3つあります。

  • 炭水化物(糖質)
  • タンパク質
  • 脂質

特に運動中のメインのエネルギーになるのは
糖質です。

Pochmullerらは
特に90分以上の運動の場合は
6~8%の糖分濃度のドリンク摂取を
推奨しています。

これは
市販のスポーツドリンクに相当する濃度ですね。

またタンパク質も
運動のエネルギーにはなるのですが、
その割合は微々たるものです。

一方で分岐鎖アミノ酸(BCAA)は、
中枢疲労の原因である
トリプトファンの脳への輸送を阻害することで、
疲労感の低下が期待できることが
報告されています。

効率的な水分の吸収

特に重要なのがナトリウム濃度で、
水分にどのくらいのナトリウムが
含まれているかによって
水分の吸収効率が変わってきます。

水分補給にとって重要なのは、

「いかに水分を身体から素通りさせないか」

ということです。

運動中は
体温をコントロールするために汗をかきますよね。

汗には
ナトリウムなどの電解質が含まれており、
その状態で真水を摂取してしまうと
身体のナトリウム濃度が低下します。

身体はナトリウム濃度を一定に保とうとするので、
身体のナトリウム量が少なく水分量が多い場合は、
水分を排出することで
ナトリウム濃度を保とうとします。

つまり、
水分を摂っていてもそれが身体を素通りしてしまう
可能性があるのです。

運動でかく汗にはナトリウムも含まれており、
運動中の汗の平均ナトリウム濃度は
40mmol/L程度だと報告されています。

この汗のナトリウム濃度というのも、
市販のスポーツドリンクと近い数値と
言われています。

つまり糖質補給に関しても水分補給に関しても、
スポーツドリンクを薄めずに飲んでおけば
間違いないと言えるでしょう。

また運動中に水分を摂取していたとしても、
どうしても運動後に体重の減少(=水分の枯渇)が
起きる場合はあります。

そういった時の水分補給の注意点として

  • 体重減少分以上の水分を摂取する
  • ナトリウムが含まれているものを飲む
  • 一気飲みをせずに、
    ある程度時間をかけて摂取する
  • タンパク質や糖質を混ぜて摂取する

といったことが挙げられます。

Evansらのレビューでは、
失われた分の水分と同じ量を摂取するよりも、
それより少し多い量を摂取したほうが
効果的に水分状態が回復したことや、
時間をかけて摂取したほうが
尿となって体外に排出される量が
少なかったことが報告されています。

また興味深かったことが、
糖質やタンパク質を含むドリンクのほうが、
吸収が緩やかになる分、
身体を素通りして尿になる水分量が
少なかったことも報告されていました。

  • ナトリウム
  • 糖質
  • タンパク質

3つの成分を含むドリンクの代表として、
牛乳が挙げられます。

実際にこのレビューの中でも、
運動後の水分補給に関しては、
スポーツドリンク以上に牛乳が
効果的だったという研究も紹介されています。

まとめ

エネルギー補給、疲労の低減の観点からは、
ドリンクには糖質とBCAAを入れるのが良いと
されています。

水分の吸収の観点からは、
ナトリウムを含むドリンク(スポーツドリンク)が
推奨されています。

運動後の水分摂取は、

  • 失った水分以上の量をゆっくりと摂取すること
  • ナトリウムに加えて糖質やタンパク質を含む
    ドリンクが良い(牛乳など)

とされているようです。

冬場の運動でも意外と水分は失われています。

水分摂取に関しては
オールシーズン意識していきましょう!

参考文献

  1. Baker, LB, Barnes, KA, Anderson, ML, Passe, DH,
    and Stofan, JR. Normative data for regional sweat sodium
    concentration and whole-body sweating rate in athletes.
    J Sports Sci 34: 358–368, 2016.Available from:
    http://dx.doi.org/10.1080/02640414.2015.1055291
  2. Blomstrand, E. A role for branched-chain amino acids
    in reducing central fatigue. J Nutr 136: 544–547, 2006.
  3.  Evans, GH, James, LJ, Shirreffs, SM, and Maughan, RJ.
    Optimizing the restoration and maintenance of
    fluid balance after exercise-induced dehydration.
    J Appl Physiol 122: 945–951, 2017.
  4.  Pöchmüller, M, Schwingshackl, L, Colombani, PC, and
    Hoffmann, G. A systematic review and meta-analysis
    of carbohydrate benefits associated with randomized
    controlled competition-based performance trials.
    J Int Soc Sports Nutr 14: 1–12, 2016.Available from:
    http://dx.doi.org/10.1186/s12970-016-0139-6