ウエイトトレーニングは
筋力の向上を目的としていますが、
筋力以外の筋機能の向上も目的の1つです。
例えばスクワットであれば
下肢の最大筋力の向上が期待される一方で、
パワークリーンやスナッチでは
パワーの向上を期待して実施しているのでは
ないでしょうか。
いろいろなパワー
パワー=力×速度
という定義を聞いたことはあるでしょう。
イメージとしては
スクワットで鍛えた筋力を、
速度の大きいクリーンなどのエクササイズで
パワーに繋げる。
といったものが一般的です。
一方で
プライオメトリクスなどのジャンプトレーニングも
一種のパワートレーニングと表現されます。
ではこの違いはいったい何なのでしょうか?
厳密に言えばスクワットも
ある程度の速度を伴うエクササイズですので、
『大きな力』×『小さな速度』の
パワートレーニングとも表現できます。
一方でクリーンなどのクイックリフトは
『中程度の力』×『中程度の速度』の
パワートレーニング。
ジャンプなどのプライオメトリクスは
『小さな力』×『大きな速度』の
パワートレーニング。
とも表現できるでしょう。
選手によって
『大きな力』×『小さな速度』の
パワー発揮が特に得意な選手もいれば
『小さな力』×『大きな速度』の
パワー発揮が得意な選手もいることも
明らかになっています。
Reyesら(2017)(1)は
この異なるパワーを選手個人で評価し、
苦手な部分を特に強化することで、
各選手の垂直跳びの能力を
より効率的に強化できたことを示しています。
つまり、
『大きな力』×『小さな速度』のパワーも、
『小さな力』×『大きな速度』のパワーも、
その中間である
『中程度の力』×『中程度の速度』のパワーも、
バランス良く鍛えていくことが重要
ということです。
各パワーの強化方法
ではそれぞれのパワーを高めるためには
どのような方法をとっていけば良いのでしょうか。
まず『大きな力』×『小さな速度』のパワーは、
一般的に言う「最大筋力」を強化するような
エクササイズを実施すれば良いでしょう。
スクワットやデッドリフトなどが
それにあたります。
一方で、パワーを高めるためには
ただ大きな力を出せばいいという訳でもなく、
『小さな速度』の中でも最大限の速度を出す
ことが重要になってきます。
例えばOliverら(2013)(2)は
スクワット中に
Intra Set Rest(セット内レスト)を用いた場合、
垂直跳びの向上が大きかったことを示しています。
通常のトレーニングを実施する群が
10回×3セットのトレーニングを実施する一方で、
Intra Set Restの群は各セットの10回を2分割し、
同様の強度で5回×6セットを実施する
ということです。
こうすることによって
エクササイズ実施時の疲労の低減、
それによる挙上速度の増加から
パワー発揮能力が高まったと考えられます。
次に『中程度の力』×『中程度の速度』の
パワー発揮能力ですが、
もしも技術的・施設的な問題で
クイックリフトが行えない場合は、
バーベルを担いだジャンプスクワットなどでも
代用可能です。
この時もしっかりとした速度を担保するために、
最大の速度で実施するように意識しましょう。
『小さな力』×『大きな速度』の
パワー発揮に関しては、基本的には
自体重でのジャンプトレーニングが
そこに当たります。
一方で、
自体重よりさらに負荷を減らしたAssisted Jump
(バンドなどで身体を上方に牽引し
脚への負荷を減らしたジャンプ)を
取り入れることも有効でしょう。
まとめ
パワー発揮にもいろいろな種類のものがある
ことを紹介しました。
チームで指導をする場合は
ある程度統一したプログラムになると思いますが、
場合によっては
『苦手なパワー』によりフォーカスするような
トレーニングを実施してみても
良いかもしれません。
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
参考資料
- Jiménez-Reyes, P, Samozino, P, Brughelli, M,
and Morin, JB.
Effectiveness of an individualized training based on
force-velocity profiling during jumping.
Front Physiol 7: 1–13, 2017. - Oliver, JM, Jagim, AR, Sanchez, AC, Mardock, MA,
Kelly, KA, Meredith, HJ, et al.
Greater Gains in Strength and Power With Intraset Rest
Intervals in Hypertrophic Training.
J Strength Cond Res 27: 3116–3131, 2013.
http://insights.ovid.com/crossref?an=00124278-201311000-00026
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