成人アスリートであれば
頻度はまちまちにしろ、
アルコールを摂取している選手も多いでしょう。

友人同士の飲み会に限らず、
チームの祝勝会、
サポートしてくれている後援会との付き合い、
意外といろいろなところにお酒はつきものです。

トレーナーとしてチームに関わっていれば、
選手にアルコールの摂取について
尋ねられることも多いのではないでしょうか?

本日はBarnesらのレビュー論文をもとに、
アルコールが
アスリートのパフォーマンスやリカバリーに
どのような影響を与えるのか
について
紹介していきます。

アスリートの飲酒習慣

アスリートは同年代の非アスリートに比べて、
多くのアルコールを摂取していることが
明らかになっているそうです。
特に、
ラグビーや
オーストラリアンフットボール選手では
飲酒量が多いそうです。

  • トレーニングや試合のハードワークへのご褒美、
  • クラブの伝統としての飲み会

など、多くの機会があることが要因とのこと。

アルコールの含有量

アルコール健康医学協会のHPを基に、
缶ビール1杯(350ml)のアルコールを算出すると
約14gです。

Barnesらの研究内では
体重当たりのアルコール量での記述が
されているので、
この記事内ではそれを基に、
体重あたりの量と缶ビールの本数の換算で
例を示します。

リカバリーへの影響

激しい運動後には、
グリコーゲンや水分の損失が起きます。

水分の再貯蔵が
短期的なリカバリーには必要になってくるのですが、
アルコールには利尿作用があり、
水分の損失を引き起こすと言われています。

0.49g/体重(缶ビール2本分)の
アルコール摂取では
有意な尿量の増加がなかったものの、
0.92g/体重(缶ビール4本分)の
アルコール摂取では
尿量が有意に増加し、
血液量の増加を阻害した
と示されています。

一方で、グリコーゲンの再貯蔵に関しては
アルコールの摂取は大きな影響は与えないようです。

免疫機能・ホルモンへの影響

アルコールの摂取は
サイトカインの抑制を引き起こし、
免疫機能の低下につながるようです。

また、ドーパミンやアドレナリンの増加により、
気分の高揚感が得られる一方で、

ストレスホルモンであるコルチゾールの増加

睡眠に関連する

セロトニンやメラトニンの低下

により
十分な睡眠、リカバリーを行えなくなる可能性も
示唆されています。

また0.5g/体重(缶ビール2杯)の
アルコール摂取では
テストステロン濃度に影響を与えなかった一方で、
1.5g/体重(缶ビール6杯)のアルコール摂取では
テストステロン濃度が低下したことも
報告されています。

テストステロンは
筋力の向上にも寄与するホルモンですので、
過度な飲酒はトレーニングの効果も
阻害する可能性も考えられます。

まとめ

全体的に、
少量~中程度のアルコール摂取
(缶ビール2杯程度)
であれば
リカバリーやトレーニング効果に
大きな悪影響は与えなさそうです。

一方で
ある程度の量
(缶ビール4~5本以上)
の摂取になると、
水分状態やホルモン分泌に悪影響を及ぼし、
リカバリーやトレーニング効果を阻害する
可能性が示唆されています。

もちろん、
アルコールの耐性には個人差もありますし、
他の要因(睡眠やトレーニング量)の
影響もあるので、

「2杯なら大丈夫」
「5杯以上は必ずしも悪」

とは言えませんが、
ある程度の参考にはなるかと思います。

時には
アルコールも交えた気持ちのリフレッシュも
必要かもしれませんが、
正しい知識を持ちながら楽しみたいですね!

参考資料

  1. Barnes, MJ. Alcohol: Impact on sports performance and
    recovery in male athletes. Sport Med 44: 909–919, 2014.
  2. 公益社団法人 アルコール健康医学協会HP
    http://www.arukenkyo.or.jp/health/base/index.html