怪我をしないということは、競技スポーツにおいて
非常に重要なことになります。

細かい怪我を繰り返していては、
それだけ練習中のコンディションも落ちて
練習の質が下がりますし、
前十字靭帯損傷などの大きな怪我に至っては
半年~1年ほど競技ができない場合もあります。

そんなに長い間離脱してしまっては
今まで積み上げてきた技術も衰えていくでしょうし、
特に学生スポーツでの長期離脱は致命的です。

またプロスポーツにおいても、
例えば年俸1億円のプレーヤーが
1年間離脱をするとうことは、
1億円の損失ということになります。

以上のことから、
「怪我の予防」は非常に重要だということは
分かってもらえたかと思います。

ただ、怪我を予防しようと言っても
そのアプローチには様々なものがあります。

オーバーユースを防ぐために、
コーチとトレーナー(S&C、AT)が連携して
練習量をコントロールする。

怪我につながる動作(ミスユース)を防ぐために、
普段のアップで正しい動作を癖付けるための
トレーニングを行う。

怪我をしない強い身体(筋・腱、関節、靭帯)を
作るためにウエイトトレーニングを行う。

捻挫の予防のためにテーピングを巻いておく。

様々な専門的なアプローチがありますが、
まず取り組むべきは【しっかりと寝ること】

これが最も安価で、専門家の指導を必要としない、
効果的な「傷害予防のアプローチ」です。

「しっかり睡眠をとらないと身体も回復しないし、
集中力も低下して怪我をする」
こんなことはわざわざここで言われなくても
想像に難くないと思います。

しかしながら、
・睡眠が不足するとどのくらい怪我が増加するのか?
・そもそも十分な睡眠とはどれくらいなのか?
以上のことを明確に説明できるかと言われたら、
意外と言葉に詰まる方もいるのではないでしょうか。

そこで1つ、
睡眠の重要性を裏付ける研究を1つご紹介します。

Chronic Lack of Sleep is Associated With Increased
Sports Injuries in Adolescent Athletes
(Milewski et al, 2014)

男女学生アスリート(15±1.5歳)112人に対して
オンライン調査を行い、複数の項目と傷害の発生の
関係性について検討した研究です。

この研究の中で、
特に傷害との関連が見られた項目の1つが
【睡眠時間】です。

以下のグラフのように、少ない睡眠時間の選手ほど
傷害の発生率が高い傾向が認められました。

(Milewski et al, 2014より)

6時間睡眠と9時間睡眠の選手を比べると、
なんとその差は約4倍です。

また、ここで注目してほしいのは、
7時間睡眠であっても怪我の発生率は高いということ。

もっと眠る指導が必要なのでは?

私が実際に選手と話していても感じることなのですが、
多くの選手が
「7時間程度の睡眠を十分な睡眠だと思っている」
ということが問題のように思えます。

厚生労働省の調査 (2016)では、
日本人の約7割が7時間以下の睡眠しかとれていない
ことが報告されています。

1/3以上、世代によっては半数ほどの人が
日中の眠気などの問題を抱えており、
この睡眠時間が十分なものとは言えないでしょう。

加えてアスリートのように、激しい運動や、
そのダメージからの回復を必要とする人々は、
なおさら7時間程度の睡眠では足りないでしょう。

また、十分な睡眠は怪我の予防効果だけでなく
身体作りにも大きな影響を及ぼし、
身体的なパフォーマンスの発揮や、
認知・判断能力にも大きな影響を及ぼすとも
考えられています。
(それらの詳しいデータは、また別の機会にご紹介!)

そのため、現状で睡眠時間が不足している選手は
睡眠時間を増やすだけで一石三鳥、四鳥もの
効果が期待できます。

選手の睡眠時間の意識を

自分の知識を活かしてチームの怪我を減らしたい!
トレーナーとしては誰もが考えていることだと思います。

ただ、専門的なアプローチを行う前に、
今一度選手の睡眠時間がどれくらいかを
聞いてみてはいかがでしょうか?

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考文献
Matthew D. Milewski, MD, David L. Skaggs, MD, MMM,
Gregory A. Bishop, MS, J. Lee Pace, MD, David A. Ibrahim, MD,
Tishya A.L. Wren, PhD, and Audrius Barzdukas, ME
Chronic Lack of Sleep is Associated With Increased Sports Injuries in
Adolescent Athletes
J Pediatr Orthop Volume 34, Number 2, March 2014

厚生労働省
平成 27 年 国民健康・栄養調査結果の概要