アキレス腱炎、膝蓋腱炎、、
これら慢性的な『腱炎』に悩んでいる
アスリートって、結構多いですよね。

「走るのにも跳ぶのにも着地するのにも痛いし、
休んでてもなかなか良くならないし、
治療院に行ってもその日は良くなるけど
次の日また痛くなっちゃう」
という声も選手から良く聞きます。

学校で習うリハビリの授業では、
「傷害が悪化しないようにリスク管理を
しっかりと行う」
というのは必ず習います。

その延長線上で
「リハビリの中では痛い動作はやらせない」
と考える人も少なくないのではないでしょうか。

傷害の状態を「悪化させない」ことを考えると、
その方針でもいいかもしれませんが、
実は中には、
多少痛くても運動で負荷をかけたほうが
症状が軽快することもあるのです。

腱炎の治療には「トレーニング」が有効??

先ほど例を挙げた「腱炎」の場合、
特に腱に変性が起きており、慢性化した腱炎には、
実は安静にしたりステロイドなどの注射を打ったり
一般的な治療を行うよりも、
その筋・腱に適切な負荷をかけることで
症状が軽快することもある
のです。

Alfredsonら※1は、
安静、フィジカルセラピーなどを行っても
症状が軽快しなかった慢性的なアキレス腱炎患者を

  • 手術群
  • エキセントリックトレーニング群

に分け、1年後の患部の痛みなどを比較しました。

エキセントリックトレーニング群は、
健側のカーフレイズで身体を挙上後、
患側の足でふくらはぎ、アキレス腱に
エキセントリックの負荷をかける
というものでした。

運動介入後の痛みの増悪がなければ
運動中に痛みがあっても良いものとし、
負荷をかけられるようであれば
徐々に負荷を高めていきました。

その結果、1年後の足関節の底屈筋力、
ランニング時の痛みはともに
エキセントリックトレーニング群のほうが
優れていました。

同様にKongsgaadら※2は、
慢性的な膝蓋腱炎患者を

  • コルチコステロイド注射群
  • エキセントリックトレーニング群
  • 高負荷スロートレーニング群

に分けて12週間の介入を行い、
半年後の様子を比較しました。

エキセントリックトレーニング群では
先ほどのアキレス腱炎の介入と同様に、
患側の片脚スクワットを
エキセントリック局面のみ行い、
高負荷スロートレーニング群では
スクワット、レッグプレス、ハックスクワットを
3秒で挙上、3秒で下降を行い、
負荷は12週間で15RM⇒6RMと
変化させていきました。

その結果、
痛みの度合いはエキセントリックトレーニング群、
高負荷スロートレーニング群で有意に低く、
半年後の満足度は高負荷スロートレーニングで
最も高くなっていました。

これらの結果が表れた要因として、
※2の著者らは、
腱に筋肉の収縮の負荷を加えたことで
コラーゲンの配列が整った
のではないか
と考察しています。
(逆に注射などの薬学的な介入では
腱の強度は強くなりません)

まとめ

近年ではこのような、
トレーニングが変性を起こした腱炎に与える
ポジティブな効果は徐々に認知され始めましたが、
以外と知らない人もいたのではないでしょうか?

詳しい介入方法は論文の中に書いてありますので、
選手への処方を考えた方は是非一度
下の参考資料を確認してみてください!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考資料

  1. Alfredson, H, Pietila, T, Jonsson, P, and Lorentzon, R.
    The American Journal of Sports Medicine Heavy-Load
    Eccentric Calf Muscle Training For the Treatment of
    Chronic Achilles.
    Am J Sport Med 26: 360–366, 1998.
  2. Kongsgaard, M, Kovanen, V, Aagaard, P, Doessing, S,
    Hansen, P, Laursen, AH, et al.
    Corticosteroid injections, eccentric decline squat training
    and heavy slow resistance training in patellar tendinopathy.
    Scand J Med Sci Sport 19: 790–802, 2009.