
「言葉の定義をしっかりと認識する」というのは
トレーナーにとって非常に重要です。
トレーニングに関して、
世間には意味が曖昧な言葉も多くあります。
例えば「体幹」という言葉は、
本来身体の胴体部分を指す言葉ですが、
その重要性から
「バランス能力に優れていること」も
「コンタクトが強いこと」も
「切り返しが速いこと」も、
時には『体幹が強い』という表現を
されることがあります。
逆に考えると、
『体幹が強い』という言葉が何を指すのか。
非常に曖昧ですよね。。
持久力に関しても、
それが「無酸素持久力」や「筋持久力」なのか、
「最大酸素摂取量」なのかで
指す意味は違ってきます。
つまり、
「言葉の定義が曖昧だと、どの要素をどのように
トレーニングすれば良いのか分からない」
といった状況に成りえるのです。
そこで今回は、意外と曖昧な人も多い、
「負荷」「量」「強度」といった
言葉の意味について考えていきます。
「負荷」「量」「強度」の意味
簡潔にこれらの関係性について整理すると
負荷=強度×量
です。
「負荷」(Load)とは、
身体にどの程度の負荷がかかっているのか?
総負荷とも表現します。
「強度」(Intensity)とは、
どの程度激しい運動なのか?
ランニングであればスピード、
ウエイトトレーニングであれば重量などが
こことあたります。
「量」(Volume)とは、
どれくらいの運動量なのか?
ランニングであれば時間、
ウエイトトレーニングであれば回数やセット数に
なります。
先ほどの
負荷=強度×量の式に
ランニングやウエイトトレーニングを当てはめると
- ランニング
走行距離=速度×時間
- ウエイトトレーニング
総挙上重量=重量×回数(×セット数)
になります。
ウエイトの重さのことを
負荷と表現することもありますが、
負荷、強度、量の関係性で考えるときは、
その負荷は強度のことを指します。
ややこしいですが…。
なぜこれらの言葉の表現が大事かというと、
トレーニングの変数をコントロールするときに、
このような共通言語がないと
コミュニケーションがとれないからです。
例えば、
トレーナー:
「今週は負荷を減らしたほうが
いいかもしれません。」
コーチ:
「わかりました。
今日から負荷は落としめでいきましょう。」
といった会話をしたときに、
トレーナーは
『量を減らして短い時間で行うことで
負荷を減らすべき』
と考えていたとしても、
コーチは
『プレーが激しいと負荷がかかりそうだから、
あまり激しくない基本的なスキル練習を
長めにとろう』
と考えるかもしれません。
これでは意図したことが
まったく伝わらないですよね?
一方でトレーナーとコーチが
「負荷」「強度」「量」の
言葉の意味を共通して認識し、
きちんと細かい部分まで話せた場合、
そのようなミスマッチは起きづらくなります。
これらはコミュニケーションを
とるうえでも重要ですし、
トレーニングのメニューを組むときも、
負荷、強度、量の関係性を
しっておくことは重要です。
特に、強度と量の間には
トレードオフの関係があることを
認識しておくことが必要になります。
高強度インターバルトレーニングの
メニューを組むときには
強度を高く設定しすぎると、
必要な量をこなすことができなくなりますし、
ウエイトトレーニングのときに
強度(%1RM)が高いうえに量も多いと、
そのメニューをこなせない、
もしくは著しくフォームが崩れてしまう
可能性もあります。
まとめ
今回紹介した、
「負荷」「強度」「量」の言葉の定義は、
- スタッフ間のコミュニケーション
- トレーニングプログラムの作成
また、チームによっては
- GPSや加速度センサーで計測した
データの解釈
に必要になってきます。
今回紹介した3つの言葉を
必ず使えというわけではなく、
同様の意味を示す言葉の定義を
きちんとチーム内、自分のなかで
明確に定義づけしておけば良いのです。
例えば、総負荷=質×ボリューム、
とかでも共通理解があればOKです。
チーム内で議論をする前に、
言葉の定義をもう一度明確にしてみては
どうでしょうか?
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
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