前回の記事 では

「パワーの中にもいろいろなパワーがある」

ということを紹介しました。

バックスクワットで発揮されるような
『大きな力』×『小さな速度』のパワー
もあれば
自体重のジャンプで発揮されるような
『小さな力』×『大きな速度』のパワー
もあり、
それらのパワーを総合的に高めていくことで、
パフォーマンスの向上につながる

といった内容でしたね。

今回はそれらパワーの概念とは少し異なる
『RFD』について
Maffiulettiらのレビュー論文(1)を基に
簡単に解説していきます。

RFDとは

RFDとは

「Rate of Force Development」

の略のことです。

日本語に直すと
『力の立ち上がり率』です。

一般的に、
横軸に時間、縦軸に力をとったときの
50~75msecあたりまでに発揮した
力の立ち上がりの角度から算出されます。

RFDの算出方法

※コンセントリック収縮では、
動作開始後に関節の角速度が増加します。
速度の大きい収縮時のほうが
力の低下が起きるので、
RFDはアイソメメトリックの収縮で
測定することが多いようです。

このRFDも
最大筋力(≒MVC)やパワーと並び、
非常に大事な要素になってきます。

例えば
いくら大きな力を出せたとしても、

「力を発揮するぞ!」

という脳の命令が出てから、
最大の筋力・パワーに到達するまでに
時間がかかってしまうと(RFDが低いと)
実際のパフォーマンスに
その筋力・パワーを活かせない
からです。

  • スプリント動作
  • 投球動作
  • 跳躍動作

などの運動は
ボールや地面に力を加えることで
パフォーマンスを発揮します。

しかし、
その地面やボールに力を加えることができる時間は
限られています。

力を発揮しきらないうちに足が地面から離れたり、
手からボールがリリースされてしまうと、
大きな力積を地面・ボールに伝えられません。

しかしRFDが高いと、
自分の持っている筋力・パワーを
最大限に伝えることができ、
高いパフォーマンスを発揮できる

考えられるのです。

RFDを決定する因子

RFDは

  • 最大筋力自体の大きさ
  • 最大筋力への到達速度

によって決定されます。

これらにつながるものとしては、

  • 神経の機能
  • 筋断面積
  • 筋腱のスティッフネス

などが挙げられます。

神経の機能

神経の働きについては、
筋の放電率、運動単位の動員数などが
挙げられます。

神経的な働きが大きくなればなるほど
RFDも大きくなるようです。

また、間接的に、
覚醒水準の増加もRFDを高めることに
繋がりそうです。

これら神経の働きを長期的に高めるためには

  • 高重量のウエイトトレーニング
  • 爆発的トレーニング(クイックリフトなど)

が有効です。

低重量・中重量の高ボリュームトレーニングでは、
代謝的ストレスが大きくなることで
筋肥大は誘発されますが、
神経の働きへの作用は少し小さくなってしまうので
神経の機能の向上を目的にする場合は
負荷は大きいほうが良い
でしょう。

しかしながら
RFDは最大筋力の影響も受けるので、
その最大筋力に影響を与える筋断面積を
向上させるという意味では、
間接的に高ボリュームトレーニングも
ポジティブな影響を与えると考えられます。

筋腱のスティッフネス

筋腱のスティッフネスが高いほうが、
収縮を開始した時点での力の伝達効率は
高くなります。

この筋腱のスティッフネスは、
筋力トレーニングによっても
高まることが分かっているそうです。

一方で
過度なスタティックストレッチは
このスティッフネスを低下させてしまう
恐れもあるので、
RFDを高めたい場合は
少し控えたほうがいいかもしれませんね。

まとめ

今回は筋力・パワーと並んで重要な
『RFD』についてご紹介しました。

あまり現場で測定し評価する機会は
ないかもしれませんが、
選手のさらなるパフォーマンスの向上を
考えたときには、
抑えておかなければいけない要素の1つ
です。

トレーニングプログラム作成の際には、
少しこの概念も参考にしてみてください!

参考資料

  1. Maffiuletti, NA, Aagaard, P, Blazevich, AJ, Folland, J,
    Tillin, N, and Duchateau, J. Rate of force development:
    physiological and methodological considerations.
    Eur J Appl Physiol 116: 1091–1116, 2016.