昔は、
運動中に水を飲まない指導がされていた
時代があるそうですが、
最近ではそのような指導をされるチームは
少ないですよね。

「しっかりと水分補給をしておきなさい!」

というセリフも、
コーチ・トレーナーからよく聞かれます。

水分摂取が重要だというのは
紛れもない事実なのですが、

  • 何故水分が必要なのか
  • 水分不足が起こると何が起こるのか
  • 水分不足を判別する方法

こういったこともトレーナーであれば
詳細に把握しておく必要があると思いませんか?

今回は『水分不足のデメリット』という観点で、
水分摂取の重要性について紹介していきます。

水分の重要性

人間の身体は60%ほどが水分だとされており、
ちょうど良い水分量を保つことで
体内の浸透圧(ナトリウムなどの濃度)を
一定に保てるようになっています。

しかし運動中は
急速な発汗によって
体内の水分が不足することが多いので、
このバランスが崩れ、

  • 身体の冷却機能が低下して熱中症になる
  • 血液量が減ることによる酸素の運搬能力の低下で
    パフォーマンスが発揮出来なくなったりする

こういったケースが考えられます。

運動中にしっかりと
水分を補給出来ていれば良いのですが、
特に暑熱環境下であれば
水分補給が追い付かない場合が多いです。

そうして引き起こされる
水分不足のデメリットとして

  • 持久力の低下
  • 筋力、パワーの低下
  • 認知機能の低下

などが挙げられます。

身体パフォーマンスへの影響

Savoieらは、
水分不足の状態がパフォーマンスに
どのような影響を及ぼすのかを
検証した研究をまとめ、
メタ解析を行いました。

その結果、水分不足の状態では

持久力:-8.3±2.3%
筋力 :-5.5±1.0%
パワー:-5.8±2.3%

といったように、
様々なパフォーマンスで
低下が認められたことを示しました。

持久力の8%の低下となると、
例えば1500m走を5分で走れる選手が
水分不足のせいで5分24秒になる計算になります。

また、筋力で考えると
スクワットの最大挙上重量が160㎏の場合、
150㎏程度しか持ち上がらなくなることになります。

このように、水分不足は
パフォーマンスの低下を引き起こしてしまう
原因の一つになることがわかります。

感情・認知機能への影響

体内の水分が不足すると、
身体パフォーマンスだけでなく

  • 怒り
  • 疲労感などの負の感情の増加
  • 短期記憶能力
  • 計算力
  • 反応速度

などの認知機能の低下といった変化が
認められたことも報告されています。

水分状態の判別

上記のレビューで紹介されている研究では、
体重の2~3%程度の水分の損失を
脱水状態と定義しているケースが多いです。

つまり、適切な水分摂取が出来ている状態から
2~3%の体重の減少が起きると、
上記で紹介したようなネガティブな変化が
起こる可能性が高いです。

これを実際の練習、試合に応用すると、
運動前から十分な水分摂取を行った状態で
練習前後の体重を測定し、
2%以上の低下が起きていれば、
練習中の水分補給が足りなかったということに
なります。

また、尿の浸透圧を測定することで
体内の水分状態を推定する方法もありますが、
そのための機材がない場合は、
尿の色でチェックすることも出来ます。

濃い黄色の場合は
水分が足りていない可能性が高いので、
日常生活から水分を摂取する必要があります。

まとめ

選手に水分補給の重要性を教育する場合、
ただ水分補給を促すだけでなく、
水分が不足すると、
どのようなデメリットがあるのかを、
数値を基に具体的に説得することで、
より重要性が伝わります。

是非今回の内容をそのための材料にしてください!

参考文献
1.  D’Anci, KE, Constant, F, and Rosenberg, IH.
     Hydration and cognitive function in children.
     Nutr Rev 64: 457–464, 2006.
2.  Savoie, FA, Kenefick, RW, Ely, BR, Cheuvront, SN, and
     Goulet, EDB. Effect of Hypohydration on
     Muscle Endurance, Strength, Anaerobic Power and
     Capacity and Vertical Jumping Ability: A Meta-Analysis.
     Sport. Med. 45: 1207–1227, 2015.