『カフェイン』

日常生活を送っていても、
この物質の名前はよく耳にしますし、
多くの人は摂取したこともありますよね。

  • お茶
  • コーヒー
  • エナジードリンク

様々な飲料物に入っており、
学生時代の勉強のお供として、
午後一の眠気に打ち勝つために
仕事中に摂取している人も多いかと思います。

そんなカフェインですが、
スポーツの世界でも
パフォーマンスアップのために活用している
という選手も多いですよね。

ISSN(国際栄養学会)のレビューにおいても、

カフェインは
パフォーマンスをアップさせ、
適切な使用量を守れば健康への害はない物質

とされています。

カフェインが効果を発揮するメカニズム

カフェインは、
クレアチンやβアラニンなどと異なり、
脳に作用することで、
パフォーマンスをアップします。

ドーパミンというホルモンは、
脳において運動抑制経路にブレーキをかけます。

言い換えると、
“ドーパミンが運動へのアクセルになる”わけです。

ドーパミンの働きを抑制するのが、
アデノシンという物質です。

アデノシンは激しい運動をすると分泌され、
“ドーパミンを抑える作用がある”
と言われています。

これが疲労の1つの要因でもあります。

カフェインは、
アデノシンの働きを阻害する効果があるので、
運動前にカフェインを摂取することで、
覚醒水準が増加し疲労も感じづらくなるため、
脳内から運動のゴーサインを
出しやすくする
のです。

カフェインの効果

カフェイン摂取が、
パフォーマンスに与える影響について検討した
Warrenらのメタアナリシスでは、
以下のように報告されています。

最大筋力についての効果量(ES)は0.19となり、
4%の向上に相当する効果がある
とされ、

筋持久力へのESは0.28となり、
14%の向上に相当する効果がある、

と報告しています。

また、
最大筋力に関して細かく分析すると、

下肢の大筋群においては6%に相当する向上

が認められたとしています。

筋力で6%の向上と言えば、
例えば、

スクワットで150㎏の挙上が可能な選手の場合、
カフェインの摂取で159㎏の挙上が可能になる

ということになります。

なかなか大きな効果ですよね。

また、
ESは筋持久系の課題で、
最大筋力よりも大きくなっています。

これは先ほどのメカニズム、
アデノシンの働きをブロックし、
疲労感を低減させるということから考えると
納得の結果ですよね。

また最大筋力や筋持久力と同様に、
タイムトライアルなどの持久的運動においても
カフェイン摂取は
効果を発揮するとされています。

効果的な摂取方法は?

カフェインを摂取しても、
それが腸や血管を通して脳に達しなければ、
効果は期待できません。

カフェイン摂取後の血中カフェイン濃度は、
60~90分後に最大になるとされており、
それを逆算して摂取するのが良いでしょう。

摂取量に関しては、
体重×3㎎の摂取で効果が認められています。

体重が70㎏の選手の場合は、
210㎎のカフェインになりますね。

コーヒー100mlには、
約60㎎のカフェインが含まれているので、
350mlの缶のコーヒーを摂取すると
それくらいになります。

お茶の場合は、
カフェイン含有量はコーヒーの半分ほどなので、
700mlが目安
になります。

先ほど紹介したWarrenらのメタアナリシスでは、
筋持久力の課題に関しては、
体重×3㎎以上の摂取をしても
追加の効果も認められてい
るため、
効果を感じられない場合は、
もう少し摂取しても良いかもしれません。

まとめ

カフェインは、
ドーパミンに作用することにより
筋力や筋持久力などのパフォーマンスを
向上します。

摂取量の目安は、
体重70㎏であれば、
350ml程度のコーヒー缶を1本程度
運動の60~90分前に摂取すると良い
です。

ISSNのレビューでは、
適量を摂取すれば健康的に問題はない
とされていますが、
摂取量やタイミングを間違えると、
もちろんデメリットも存在します。

次回はそのあたりも詳しく解説していきます!

参考資料

  1. Higgins, S, Straight, CR, and Lewis, RD.
    The Effects of Preexercise Caffeinated Coffee Ingestion on
    Endurance Performance: An Evidence-Based Review.
    Int J Sport Nutr Exerc Metab 26: 221–239, 2016.
  2. M., KC, Wilborn, CD, Roberts, MD, Smith-Ryan, A,
    Kleiner, SM, Jäger, R, et al.
    ISSN Exercise & Sport Nutrition Review: Research &
    Recommendations. J Int Soc Sports Nutr 7: 7, 2018.
  3. Ruxton, C. The impact of caffeine on mood, cognitive
    function, performance and hydration: a review of benefits
    and risks. Br Nutr Found Nutr Bull 33: 15–25, 2008.
  4. Warren, GL, Park, ND, Maresca, RD, McKibans, KI,
    and Millard-Stafford, ML. Effect of caffeine ingestion on
    muscular strength and endurance: A meta-analysis.
    Med Sci Sports Exerc 42: 1375–1387, 2010.
  5. クリス・クーパー(著)、西勝英(訳).
    走る、泳ぐ、ダマす. 金芳堂, 2018