バスケットボール、サッカーなど、
コンタクトや反応の伴うスポーツに多い傷害、
「足関節捻挫」

最も頻度の高い傷害の1つとしても
知られていますよね。

大事な試合の前に主力の選手が足首を捻ってしまい
出場できず…。
なんてこともコーチ、トレーナーのみなさんなら
目の当たりにしたこともあるかと思います。

その足関節捻挫の発生、再発を防ぐために、
各チームで様々な取り組みがなされていると
思います。

足関節捻挫の再発予防の最もポピュラーな手段には
「テーピング・サポーター」が挙げられますよね。

テーピング・サポーターの足関節捻挫への予防効果

よくテーピングとサポーターどちらのほうが
効果があるのかが議論になることがあります。

足関節捻挫の予防に対しては基本的にはどちらも
同等の効果が認められています。

捻挫の既往がある選手に関しては
特に発生率を下げることができると
研究でも明らかになっています。

テーピング・サポーターの
足関節捻挫の発生率への効果
(Dizonら、2009より)

サポーター テープ
既往なし 既往あり 既往なし 既往あり
OR 0.57 0.31 0.60 0.29
95%CI (0.21~1.56) (0.18~0.51) (0.19~1.89) (0.14~0.57)

※OR (Odds Rate):
捻挫を受傷した選手がテーピングまたはサポーターを
していた割合に対する、受傷しなかった選手がテーピング
またはサポーターをしていた割合の比。
1以下だと受傷した選手ほどテーピングまたはサポーターを
していなかったことを示す。

もちろん、テーピングだと症状に応じて
より固定力を強めたり弱めたりできる一方で、
サポーターだと繰り返し使えるという
経済的負担の少なさがあり、
どちらも長所短所があるといえます。

このように研究においても、
もちろん現場の経験においても
テーピングやサポーターが足関節捻挫の発生、
特に再発予防に貢献するのは明らかです。

しかし中には、「動きづらい」といって、
テーピングを嫌がる選手も中にはいると思います。

テーピング・サポーターを巻くかどうかは
その動きづらさと捻挫の予防効果を天秤にかけて
決定されると思います。

しかし「動きづらい」という感覚があるものの、
実際に動きに悪影響を及ぼし、
パフォーマンスを低下させるのでしょうか?

テーピング・サポーターのパフォーマンスへの阻害効果

テーピング、サポーターが
パフォーマンスへ与える影響については、
様々な研究が行われていますが、
研究によって異なる報告がなされています。

そこで2005年にCordovaらは
メタアナリシスを行い、
複数の研究結果を統合しています。

テーピング・サポーター
パフォーマンスへの阻害効果
(Cordovaら、2005より)

Tape Lace-Up Semirigid
Sprint -0.14 -0.22 -0.10
90%CI (-0.36~0.08) (-0.47~0.03) (-0.28~0.08)
Agility -0.01 -0.03 -0.05
90%CI (-0.24~0.21) (-0.14~0.20) (-0.17~0.27)
Jump -0.14 -0.04 -0.07
90%CI (-0.37~0.09) (-0.24~0.16) (-0.20~0.06)

※単位:ES(Effect Size)
※Lace-Up:
ナイロンなどの素材でできており、
ひもで結ぶタイプのサポーター
※Semirigid:
ポリマーなどの硬い素材で左右を固定した
タイプのサポーター
※90%CI:
90%信頼区間のこと。
結果のおよそ95%がこの範囲におさまることを示す。

テーピング・サポーターともに、
スプリント、アジリティ、ジャンプの
どのパフォーマンスに対してのESも
90%CIが0をまたいでいるので
パフォーマンスへの阻害効果があるとは
断言はできません。

しかしスプリントへの効果に関しては、
テーピング・サポーターともに
90%CIは0をまたいでいるものの
大部分がマイナスの数値になっています。
(特にLace-Upタイプのものだと
-0.47~0.03とほぼマイナスの効果)

この研究ではESを%に置き換えてもいますが、
スプリントやジャンプの場合は~1%程度の阻害
なるようです。

1%といえば、20mの3.00秒が3.03秒、
70.0㎝のジャンプが69.3㎝になる程度と言えます。

球技スポーツのパフォーマンスにおいては
この程度の低下は許容範囲かもしれませんが、
100m走10.0秒の1%の低下といえば10.1秒と、
大きく順位が変わりえる変化になります。

球技スポーツにおいても
例えば野球の代走の切り札の選手なんかは
スプリントスピードの低下は命取りですよね。

まとめ

足首のテーピング・サポーター
足関節捻挫の再発予防に大きく貢献します。

一方でスプリントスピードやジャンプといった
パフォーマンスを若干低下させる可能性もあります。

何事もそうですが、
テーピングやサポーターにおいても
メリット、デメリットを把握したうえで
選手に処方しましょう!

執筆者:佐々部孝紀

参考文献
Cordova, ML, Scott, BD, Ingersoll, CD, and Leblanc, MJ.
Effects of ankle support on lower extremity functional
performance: A meta-analysis.
Med Sci Sports Exerc 37: 635–641, 2005.

Dizon, JMR and Reyes, JJB.
A systematic review on the effectiveness of external ankle
supports in the prevention of inversion ankle sprains
among elite and recreational players.
J Sci Med Sport 13: 309–317, 2010.