トレーニングプログラムを作成するうえで、
まず確認するのは『いつ重要な試合があるのか』
ですよね。

いくらハードなトレーニングを行って
体力がついていても、
そのハードなトレーニングのせいで
疲労が溜まりすぎて、
試合で実力が発揮できなければ
意味がありません。

そこで前回の記事 で紹介した
【ピーキング】のような手法を用いて、
『なるべく体力を維持しながら』
『疲労を抜いていく』ことが
重要になってきます。

ピーキングには主に
【テーパリング】と言われる、
運動強度を維持しながら、
運動量を少なくすることによって、
身体にかかる総負荷を少なくしていく、
といった手法が用いられます。

これは練習にもトレーニングにも活用可能で、
できれば両方に応用したいところです。

お気づきの方もいるかもしれませんが、
このテーパリングというのは
ウエイトトレーニングにおいては、
線形ピリオダイゼーションの延長線上
あたります。

線形ピリオダイゼーションとテーパリング

以前の記事 でも紹介しましたが、
改めて線形ピリオダイゼーションについて。

基本的にトレーニングは、
強度(重さ)や量(回数、セット数)に
変化を加えながら行ったほうが
効果は高いとされています。※1

その中で、
時期(月単位、週単位、日単位)によって
どのような負荷をかけていくのかを
計画、期分けすることを
ピリオダイゼーションといいます。

そして、
年に数回ある重要な試合に向けて
だんだんと強度を高めて、
量を落とすピリオダイゼーション
を、
線形ピリオダイゼーションといいます。

量を落とすけど強度が高まるから
負荷は変わらないんじゃないの?
と思われるかもしれませんが、
総負荷は小さくなっていきます。

例えば
100㎏のスクワットが最大挙上重量だとすると、
8RMだと80㎏、4RMだと90㎏になり、
RMの中で最大回数を行うとすると、
8RM(80㎏)×8⇒640㎏
4RM(90㎏)×4⇒360㎏
となり、同じセットであれば
強度が高いほうが総負荷は小さくなります。

先ほども触れましたが、
このように強度が高く総負荷は落ちていく
線形ピリオダイゼーションは、
結果的にテーパリングに似た形になりますよね。

非線形ピリオダイゼーションとテーパリング

では非線形ピリオダイゼーションでは
そのような形にならないから、
試合前にはテーパリング用に
形を変えなければならないかというと、
そういう訳でもありません。

先ほど
線形ピリオダイゼーションは試合に向けて
どんどん強度を上げていくものと述べましたが、
それはあくまでも年間に重要な試合が数回の場合。

現実的には、リーグ戦形式など、
重要な試合が何試合も続く場合もありますよね。
競技によっては毎週末、重要な試合が入ることも
あるかと思います。

非線形ピリオダイゼーションは、
1週間、あるいは2週間の中で
負荷を変化させていくものです。
月曜は8RM、水曜は6RM、金曜は4RM、
というような形で。

これも、見方によっては
短期間でのテーパリングですよね?

線形ピリオダイゼーションでは、
基本的に週の中で同じ負荷を扱い、
月単位前後で負荷が変わっていきます。

となると、
週で3セッショントレーニングを行う場合、
8RMを8回や10RMを10回といった
量が多めの時期になってしまうと、
試合の日も疲れが溜まったまま迎えてしまいます。

そのため、
リーグ戦形式の中で身体を作っていくとなると、
非線形ピリオダイゼーションのほうが
向いている
でしょう。

まとめ

基本的に、
どちらのピリオダイゼーションを用いても、
トレーニング効果にはあまり差がない
ことが
分かっています。※2

となると、
どちらのピリオダイゼーションを選択するかは、
試合のスケジュール、それぞれの試合の重要度、
どれくらいトレーニングに重きを置くか、
などに左右されます。

科学的知見はあくまでも
意思決定の1つの材料に過ぎません。

今回の情報も、
是非1つの情報として活用してみてください。

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考資料

  1. Tyler D. Williams, Danilo V. Tolusso, Michael V. Fedewa,
    Michael R. Esco.
    Comparison of Periodized and Non-Periodized Resistance
    Training on Maximal Strength: A Meta-Analysis.
    Sports Medicine47:10, 2017
  2. Simon K. Harries, David R. Lubans, and Robin Callister.
    Systematic Review and Meta-analysis of Linear and
    Undulating Periodized Resistance Training Programs on
    Muscular Strength.
    Journal of Strength and Conditioning Research. 29:4, 2015