競技コーチがトレーニング指導者を探すときには、
「その競技についての理解が深い」
ということを求めることが多いです。
野球選手が行う動作とサッカー選手が行う動作は
異なっているため、
いくらプロ野球選手の指導経験があったとしても、
「サッカーについて全然知らない人に
任せるのは心配だなぁ」と思うのは、
ある意味自然なことです。
ではもしも、
その競技のトレーニング指導の経験がない場合は、
改めてその競技の指導経験のあるトレーナーの下で
インターンとして経験を積む必要が
あるのでしょうか?
もしかしたらそうしたほうが良い場合も
あるかもしれませんが、
基本的にはそんなことはありません。
トレーニング指導者の役割とは?
トレーニング指導者の役割は、
文字通り選手にトレーニングを指導することです。
しかし、その「トレーニング指導」は
あくまでも手段であり、大きな目的は2つ、
- 身体作り・身体能力の向上
- 傷害予防
です。
このことを明確に把握していると、
その競技の指導経験がなくとも
トレーニング指導ができることは分かります。
身体作り・身体能力の向上というのは、
言い換えると
- 身体組成の改善
- 体力テストの数値の向上
です。
実際に各競技で行われている測定、
体力テストを思い浮かべてみてください。
体重、体脂肪率、徐脂肪体重、筋力、
スプリントスピード、ジャンプ力、
全身持久力、アジリティ…
意外とどの競技でも共通していますよね?
つまり、トレーニング指導者の仕事の大部分は、
競技に関わらず共通しているのです。
競技による違い
一方で、身体作り・身体能力の向上に関しても、
競技ごとで若干の違いがあります。
それは
- ターゲットとする体力要素の違い
(目標とする数値の違い) - 高めた身体能力の競技への繋げ方
です。
基本的にゴール型の球技スポーツであれば、
サッカーであろうがバスケットボールであろうが、
スプリントスピードやジャンプ力(下肢パワー)は
求められます。※1~3
また、コンタクトスポーツであれば
徐脂肪体重は多い方が有利でしょう。
一方でマラソンなどの長距離走であれば、
徐脂肪体重を増加させすぎることは、
体重あたりの最大酸素摂取量を
相対的に低下させることにつながり、
あまり得策とは言えません。
(下肢の筋力・筋肉量不足による
怪我が多い場合などは、
あえて下肢の筋量の増加を
試みることはあるかもしれませんが)
このように、各競技で若干
「高めるべき体力要素」が違ってくるので、
そこの選択のためには
ある程度、競技特性を把握していないと
いけないでしょう。
また、筋力、ジャンプ力、
スプリントスピードなどの体能力を高めた後、
競技やチームによっては
高めた身体能力を競特有のアジリティに
つなげることが求められる場合もあります。
いわゆる「ムーブメントトレーニング」が
ここにあたるかもしれません。
チームによっては、トレーナーが、
アジリティトレーニング指導の一環として、
ディフェンスフットワークの指導を
行うこともあります。
それらの場合は、
競技で求められる動きがどのようなものかを
把握しておく必要もありますよね。
しかし、強調しておきますが、
あくまでもこれらのつなぎ目の指導は
- ベースの身体能力が向上していること
- コーチとの連携が取れていること
が前提の条件となります。
まとめ
パフォーマンスの観点から言うと、
トレーニング指導者・トレーナーの仕事は
「身体組成の改善」「身体能力の向上」が
ほとんどを占めます。
ここにはあまり競技特異的な知識は
必要でないかもしれません。
一方で
「必要な体力要素の選択」
「高めた身体能力を
競技特有のアジリティにつなげる」
これらのときには競技自体の知識が
必要になってくるでしょう。
次回は「傷害予防」の観点からも
競技に特化したトレーニングについて
考えていきます!
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
参考資料
- Erčulj, F, Blas, M, and Bračič, M.
Physical Demands on Young Elite European Female
Basketball Players With Special Reference to Speed, Agility,
Explosive Strength, and Take-off Power.
J Strength Cond Res 24: 2970–2978, 2010.
http://content.wkhealth.com/linkback/openurl?sid=WKPTLP:landingpage&an=00124278-201011000-00011 - 津越 智雄, 浅井 武.
Jリーグサッカークラブにおける上位カテゴリーへの
選手選抜に関する横断的研究
―体力・運動能力を対象として―.
体育学研究 55: 565–576, 2010. - JR Hoffman et al (1996)
Relationship Between Athletic Performance Tests and
Playing Time in Elite College Basketball Players.
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