ハムストリング(モモ裏の筋肉)の肉離れ。
ひどい場合だと2~3か月の離脱につながるし、
再発も非常に多い怪我なので、
癖になると非常にやっかいな怪我ですよね。
この怪我に悩まされているアスリートも
非常に多いと思います。
では予防するためにはどうすれば良いのか?
ストレッチ?トレーニング?
本日はそのヒントになり得る、
ハムストリングの肉離れのリスクファクターを
紹介します。
ハムストリングのリスクファクターに関するメタ解析
Freckletonら※2は、
ハムストリングのリスクファクターになりえる
特徴についての研究を集め、メタ解析をして
発表しています。
以下その論文内で報告されている内容です。
年齢
年齢が高いほどハムストリングの
肉離れのリスクは高くなるようです。
多くの研究では、
23~25歳あたりを基準に被験者を分けて
受傷率を分析し、そのリスクを報告しています。
20代中盤にさしかかった選手は
特に注意が必要です。
体重
はっきりとリスクがあるとは
断定できないようですが、
体重が重いほうがハムストリングの
肉離れを受傷しやすい傾向はみられるようです。
肥満傾向の選手は、
少し脂肪を落としたほうが良いかもしれません。
筋力
筋力については、
モモ前(膝伸展)、ハムストリング(膝屈曲)、
臀部(股関節伸展)の3つについて
述べられています。
驚いたことに、この研究では、
ハムストリングの筋力の弱さよりも、
モモ前の筋力の強さがハムストリングの
肉離れのリスクとして報告されています。
膝を強く、速く伸展させたときに、
ハムストリングには伸張性の負荷がかかります。
これはあくまでも推察に過ぎませんが、
「モモ前の筋力が強かったから肉離れをした」
ではなく、膝の屈曲伸展が大きい、
モモ前の筋肉に頼った動作を繰り返した結果、
ハムの肉離れを受傷したと考えることも
できそうです。
上記の推察にもつながるデータとして、
臀部の筋力が弱いほどハムストリングの
肉離れが多かったという研究も紹介されています。
これらの解析結果からは、
股関節主働の動作を見に付けつつ、
同時に臀部の筋力を強化するのが、
肉離れ予防につながると言えそうです。
既往歴
以前にハムの肉離れの既往歴があると、
無い場合にくらべて受傷率は約2~3倍に
なるそうです。
また、膝の怪我やふくらはぎの肉離れなどの
ハム以外での既往がある場合も、
ハムの肉離れのリスクは高くなるようです。
可動域
ハムストリング自体の柔軟性が不足すると
受傷率が高くなる傾向にあるようです。
また、これは研究数が少なく、
メタ解析はされていないのですが、
股関節伸展可動域が小さいほど
肉離れのリスクは高くなるようです。
股関節屈曲筋群のタイトネスが
股関節伸展の可動域制限につながると
考えられます。
その股関節屈曲筋群のタイトネスは
- 骨盤前傾のアライメントにつながり、
ハムストリングに余計な張力がかかる - 股関節伸展の可動域がないと、
股関節主働の動作がしにくく、
膝主働の動作になりやすい
といったメカニズムから、
肉離れにつながるのではないでしょうか。
まとめ
以上のリスクファクターから言えることは、
ハムストリングの肉離れの予防のためには
- 年齢が高い選手(20代中盤以上)や
ハムストリングの肉離れの受傷歴がある選手は
より一層肉離れに注意することが必要 - 膝主働の動作が受傷リスクになる可能性もあり
股関節伸展可動域を確保しつつ
臀筋群のトレーニングを行う - ハムストリングの柔軟性を確保しつつ
ハムストリングのエキセントリックの
トレーニングを行う
といったことが必要なことが示唆されます。
今回紹介したメタアナリシスでは
ハムストリングの筋力不足は
はっきりとリスクとして
報告されていませんでしたが、
ハムストリングのエキセントリックトレーニング、
ノルディックハムで、肉離れの発生率が
約1/3に減ったとされる研究※1もあるので、
やはりハムストリング自体の
トレーニングも必要です。
図 ノルディックハムストリング
ハムストリングの肉離れは
非常に再発の多い怪我。
是非今回紹介したデータを
現場での予防に役立ててください。
執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)
参考文献
- Arnason, A, Andersen, TE, Holme, I, Engebretsen, L,
and Bahr, R.
Prevention of hamstring strains in elite soccer:
an intervention study.
Scand J Med Sci Sports, 2008, 18(1), 40-48. - Freckleton, G and Pizzari, T.
Risk factors for hamstring muscle strain injury in sport:
a systematic review and meta-analysis.
Br J Sports Med, 2013, 47, 351-358
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