試合で後半、脚が止まって負けてしまった…
というとき。

真っ先に思い浮かぶのは、
『ラントレをして持久力をつけること』ですよね。

ただ、注意して欲しいのが、
持久力(最大酸素摂取量)をつけたからといって、
試合で走れるようになるとは限らない
ということ。

試合の体力というのは最大酸素摂取量の他に、
無酸素持久力、そもそものスプリントスピード、
コンタクトフィットネスなど、
いろんな体力によって決まります。

しかしそれらを分析した結果、
「やっぱり持久力(最大酸素摂取量)不足だね」
という結論になることも多いのは事実です。

しかしだからといって、
=ラントレをしなければ!
とはなりません。

今回は持久力トレーニングの選択肢について
考えていきます。

持久力トレーニングの運動様式

持久力トレーニングの運動様式は
やり様によっては無限大にあります。

極端なことをいうと、

  • 全身運動で
  • 関節に無理な負荷がかからずに
  • 心拍数が上がれば

なんでもOKです。

私が普段行っているものとして挙げられるのは

  • ラン
  • バイク
  • ローイング
  • 水泳
  • ロープ
  • バーピージャンプなどの自体重運動

です。

ここではランとそれ以外の様式の
メリット・デメリットについて説明していきます。

ランのメリット・デメリット

ランニングトレーニングのメリットと言えば、
下肢に競技に近い負荷がかけられることです。

多くの球技スポーツには
競技中にランニング動作が含まれます。
そのため、例えばオフシーズンなど、
競技練習の負荷があまり高くないときに
ランニングで負荷をかけておくと、
それが競技の準備、言い換えれば
負荷の急激な増加を防ぐことにつながるので、
シーズン頭のオーバーユースの防止ができます。

デメリットは、競技に負荷が近いので、
競技練習のボリュームが多い時
ランニングでも大きな負荷をかけてしまうと、
オーバーユースの障害を誘発してしまう
可能性が高まるということです。

一見逆のことを言っているように見えますが、
要するに『競技に近い負荷がかかるので』

  • 競技練習がない時期には
    その負荷の代替として使える
  • 競技練習のボリュームが多いときは
    負荷がかかりすぎてしまう

ということです。

もちろん『他の様式に比べて』というだけなので、

  • コンタクト
  • 競技特有のフットワーク
  • 反応を含めたアジリティ

などの負荷はかからないので、
ランニングだけで十分というわけではありません。

ラン以外のメリット・デメリット

ラン以外の運動様式では、ランのように、
競技練習がない時期の
負荷の代替の役割ができない

ということです。

一方で、ウエイトトレーニングとの両立という
点に関しては、大きなメリットがあるのです。

Wiisonら(2012)は
レジスタンストレーニングの
筋肥大、筋力向上、パワー向上の効果について、
持久的トレーニングを行なったときと
行なわなかったときで比較
しました。

その結果、
持久的トレーニングを実施したとき
レジスタンストレーニングの効果を阻害
したのですが、
バイクのほうがランよりも阻害効果が小さかった
ことを報告しています。

また、バイクやランといった
下半身の持久的運動は、
下半身の筋力向上を阻害したものの、
上半身の筋力向上は阻害しませんでした。

このことから考えると、逆に
上半身の持久的運動は
下半身の筋力向上は阻害しない

と考えられます。
(ロープ、腕のみの水泳など)

このように、

  • ランよりもバイクのほうが
    筋力向上の阻害効果が小さいこと
  • 持久的運動の筋力向上への阻害効果は
    持久的運動とレジスタンストレーニングが
    同部位である場合に発生すること

これらのことを考慮すると、
ラン以外の持久的運動を活用することで、
最大酸素摂取量を向上させながら
最大限の筋力向上も同時に達成する

ことが可能になるのです。

まとめ

持久的運動の運動様式には
様々なものが挙げられます。

これらにはそれぞれ
メリット・デメリットがあるので、
今のチーム状況に合わせた
最善のチョイスをできるようにしておきましょう!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考資料

Wilson JM, Marin PJ, Rhea MR, Wilson SM, Loenneke JP,
Anderson JC
Concurrent training: a meta-analysis examining interference of
aerobic and resistance exercises.
J Strength Cond Res 26(8): 2293–2307, 2012