レジスタンストレーニングの主な目的の1つは
「筋力の向上」ですよね。

「筋力をつけるだけだと意味がない」
「筋肉量を増やし過ぎると弊害がある」
などの意見を耳にすることもあり、
確かに一理あります。

しかしながら
「筋力が必要ない」なんてことは
アスリートにとってありえません!

筋力の重要性

まず、筋力というのはパワーの構成因子でもあり、
これがスプリントスピード、ジャンプ力、
アジリティなどのベースとなり、
身体能力の向上につながると考えられます。

もちろん、コーディネーション、柔軟性など、
筋力以外の要素も非常に重要ですが、
筋の強い出力がなければ
素早い加速が不可能であることは、
高校でも習うであろう以下の式を考えれば
明らかです。

F=ma
F=力、m=質量、a=加速度

そもそも人間が跳んだり走ったりできるのは、
地面に対して力(F)を加えることで
地面から反力(F)をもらって
自分自身の身体(m)を
加速(a)させているからです。

この状況を上記の式にあてはめると

地面に対して加える力(筋力)
=身体の質量(≒体重)×加速度

この式を「加速度=~」に組み替えると

加速度=筋力/体重

となります。

スポーツにおいて素早い動きをするためには
「加速度」が重要です。

そして加速度を高めるための方法を考えると、

  1. 筋力の向上
  2. 身体の質量(体重)を落とす

この2つの方法が考えられます。

まず、ラグビーやサッカーなどの
身体接触を伴うスポーツでは、
体重があったほうが有利ですよね?

そのため、
体重が重すぎてプレーに支障がでていない限りは、
筋力の向上によって加速度を高めるほうが
良さそうです。

場合によっては、
加速度が多少落ちてしまうとしても
むしろ体重の増加が必要なこともあるでしょう。

では、陸上やテニスなど、
そうではないスポーツでは
どのようにすれば良いのでしょう。

筋力を高めながら体重を落とすことによって
加速度は最大限に高められるのでしょうか?
もしくは体重を減らすことを第一に考えたほうが
良いのでしょうか?

現場で実際に指導されている方は
もう分かると思いますが、
筋力を高めながら体重を落とすということは、
実現不可ではないもののあまり効率の良いものでは
ありませんよね。

そもそも筋力を高めるには

  • 筋肥大
  • 神経系の機能の向上

の2つのメカニズムが考えられます。

一般的なピリオダイゼーションにおいては、
この2つの要素へのアプローチを
それぞれ強調した時期を
サイクルの中で繰り返していく
ことになります。

そのため多くの場合、筋力を向上させる過程で
筋肉量の増大(≒体重の増加)が伴います。

つまり、
加速度の増大にとってプラスな「筋力の向上」と
加速度の増大にとってマイナスな「体重の増加」が
同時に起こると考えられます。

では筋力向上に伴い筋肥大が起きる
このようなトレーニングでは
加速度の増大は起こらないのでしょうか?

理論的には、
体重の増加率が筋出力の増加率を上回ってしまうと
加速度は低下することになります。
例えば筋力の10%の向上に付随して
体重の10%以上の増加が伴うときです。

しかし、スクワットの最大挙上重量が
120kg⇒132kgとなったときに体重の増加が
70kg⇒77kgも必要かというとどうでしょうか。

そこまでの体重の増加を伴わずとも、
この程度の筋力の向上は可能ですよね?

適切なトレーニング、栄養摂取を行っておけば、
ある程度のレベルまでは体重増加による
加速度の低下は滅多に起こりません。

特にトレーニング経験の浅い選手であれば
「筋トレして力を強くしても、
体重が増えすぎて動けなくなってしまうんじゃ。。」
なんてことは杞憂に過ぎません!

注意点

筋力の重要性を説明しましたが、
一方で筋力を高めておきさえすれば
良いというわけでもありません。

筋力の向上のみでは、以下のメカニズムによって、
パフォーマンス向上につながらない可能性も
考えられます。

  • 低速度の力発揮しかできず素早い収縮スピードの
    中での筋力発揮ができない
  • 筋肉量の増大により、最大酸素摂取量が低下した
  • 筋力(地面に伝えられる力)は増大したものの
    その力を正しい方向に伝えられない

あたり前ですが、
「これさえやっておけば万能!」
なんて方法はありませんよね。

ただ、「筋力」というのは
スポーツのパフォーマンスを発揮するうえで
非常に重要な要素であることは間違いありません!

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)