
「超回復」
トレーナーであれば間違いなく聞いたことがある
単語ですよね。
トレーニングを行うと筋肉が破壊され、
48~72時間後にトレーニング前よりも高いレベルに
回復する。
そのタイミングでまたトレーニングを行うと、
より高い強度でトレーニングができ、
またその48~72時間後にトレーニングを行うと。。
といった形で学生時代に教科書から学んだのは
私だけではないはずです。
この理論に基づいて考えると、
毎日トレーニングを行うと
回復する前に筋肉に負荷がかかるので、
超回復が間に合わずに筋力はだんだん落ちていきます。
1週間に1度のトレーニングだと
超回復後に時間が経ちすぎてしまうので、
次回のトレーニング時には元の筋力レベルに
戻ってしまい、効果がないことになります。
果たして本当にそうなのでしょうか?
本日はその疑問を解決する1つのピースとなる
研究をご紹介します。
高頻度と低頻度のトレーニング効果の比較
MICHAEL H. THOMAS and STEVE P. BURNS (2016)
Increasing Lean Mass and Strength: A Comparison of High Frequency Strength Training to Lower Frequency Strength Training
この研究では、全身のトレーニングを
①上半身Push
②上半身Pull
③下半身&体幹
に分け8週間行い、以下の2群のトレーニング効果を
比較しました。
◆高頻度群(10人)
全身(①②③)のトレーニングを
それぞれ3セットずつ、週3回のトレーニング
◆低頻度群(9人)
① を9セット週1回
② を9セット週1回
③ を9セット週1回
合計週3回のトレーニング
高頻度群は各部位のトレーニングの頻度が
週3回ですので、トレーニングとトレーニングの間隔が
48~72時間前後になるはずです。
一方、低頻度群は週3回トレーニングをしているものの、
各部位のトレーニングは週1回しか行っていません。
48~72時間という時間が絶対なら、
低頻度群ではトレーニング効果が期待できないはず
ですが、結果はどうなったのでしょうか。
表 介入前後での変化
除脂肪体重 | チェストプレス 最大挙上重量 |
スクワット 最大挙上重量 |
|
高頻度群 | 1.06±1.78㎏ | 9.07±6.33㎏ | 20.2±11.6㎏ |
低頻度群 | 0.99±1.31㎏ | 5.80±4.26㎏ | 21.8±11.2㎏ |
群間の有意差 | なし | なし | なし |
除脂肪体重、チェストプレスの最大挙上重量、
スクワットの最大挙上重量、どれにおいても、
高頻度群と低頻度群の間に有意差はありませんでした。
※有意差:
統計学的に偶然ではないと認められた確かな差
チェストプレスには差があるように見えるが、変化量の標準偏差(±の値)が大きく、被験者が少なかったためか、
今回の研究では「偶然起きた可能性のある差(有意ではない差)」として扱われた
チェストプレスに関しては被験者がもっと多ければ
有意な差として認められた可能性はありますが、
除脂肪体重やスクワットの値の変化量を見ると、
「48~72時間以内に次のトレーニングを行わなければ効果がない」
というのは間違いだということが分かります。
研究で示さなくとも経験的に知っている人も
いるでしょう。
毎日30回の腹筋を行うと、トレーニングの行いすぎで
筋力が落ちていくでしょうか?
フルマラソンを完走後、72時間後には筋肉の損傷、
疲労は完全にとれているでしょうか?
こう考えれば分かりますよね。
一般的な量のトレーニングを行ううえでは、
確かに48~72時間ほどのインターバルが
適切な場合が多いかもしれません。
ただし、低負荷のトレーニングであったり、
今回の研究の低頻度群のような
高負荷(高量)のトレーニングであれば、
必ずしも48~72時間というインターバルが適切ではない
ことが分かります。
今回の研究の結果は、スケジュール的に
ウエイトルームが週1回しか使えない時などでは
役立つのではないでしょうか。
ただし、このような結果が得られる可能性が高いのは、
今回の被験者と似たような特性を持った選手の場合。
もっと筋力レベルの高い選手であれば、
トレーニングの強度が高すぎて、
9セットを満足に実施できない可能性も否定できません。
この研究がすべてではなく、
プログラムを作成するうえでの
1つのピースとして扱ってくださいね。
執筆者:佐々部 孝紀
参考文献
MICHAEL H. THOMAS and STEVE P. BURNS
Increasing Lean Mass and Strength: A Comparison of High Frequency Strength Training to Lower Frequency Strength Training
International Journal of Exercise Science 9(2): 159-167, 2016
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