スクワットには
フル、パラレル、ハーフ、クォーターなど、
様々な深さでの実施方法があります。

一般的には
深く下まで降ろして実施することが基本であり、
そのことによって
大きな関節角度で運動することによる
柔軟性の増加、
より広い関節角度での筋力獲得
など、
多くのメリットを享受することができます。
参考リンク

一方で最近は、
あえて浅いスクワットを
実施することのメリット

見直されています。

今回は
スクワットトレーニングの使い分けについて
ご紹介していきます。

スクワットの深さの違いによる効果の差

先にご紹介した参考リンクでも触れた研究ですが、
パラレルスクワットの1RMが
体重の1.1~1.2倍程度の
トレーニングの初心者を

  • 深いスクワットを実施する群
  • 浅いスクワットを実施する群

に分けてトレーニングを行ったところ、
深いスクワットを行った群のほうが
垂直跳びのパフォーマンスを向上させた
ということが報告されています(3)。

一方で、似たようなプロトコルを、
スクワットの1RMが1.6倍程度の
トレーニング上級者に実施したところ、
浅いスクワットを実施した群のほうが
垂直跳びのパフォーマンスが増加したことが
Rheaらの研究で報告されています(4)。

基本的に、
スクワットで実施した範囲での筋力を獲得できる、
すなわち

深いスクワットの群は全可動域で、
浅いスクワットの群はその浅い範囲
筋力を獲得できる

といった原則には変わりはないのですが、
浅いスクワットでは深いスクワットに比べて
「高重量が扱える」といったメリットがあります。

トレーニング上級者になればなるほど
筋力向上には大きな負荷が必要になります。

そのため、
Rheaらの研究では浅いスクワットをすることで
普段刺激が足りなかった
浅い関節角度に適応していく
ことによって
ジャンプ力向上につながった、と考えられます。

両方を良いとこ取り?

また、他の研究(1)では

  • 深いスクワットを実施する群
  • 深いスクワットと浅いスクワットを実施する群

に分けて効果を検証しています。
(トレーニングボリュームは同じになるよう
セット数は調整)
トレーニング被験者のレベルは
スクワットの1RMが1.75倍と
比較的高いレベルです。

その結果、
深いスクワットと浅いスクワットの
両方を実施した群のほうが
深いスクワットの1RMの増加が大きかった
という結果を示しました。

トレーニング被験者のレベルに注意!

上記の研究の結果から、

「トレーニングレベルがある程度高い場合は
浅いスクワットは有効かもしれない」

といったことが推察されます。

トレーニングレベルが低ければ、
深いスクワットで扱えるような重量でも
浅い関節角度での筋力は向上すると考えられるので
この結果は納得ですね。

目安として、スクワットの1RMが
自体重の1.3~1.4倍を超えないうちは、
浅いスクワットをする必要はないかもしれません。

代替案としてのトレーニング

一方で、浅いスクワットは重い重量が担げる分、
脊椎にかかる負荷が大きいということも
懸念されています(2)。

そのことを考慮すると、
別のエクササイズを
浅いスクワットの代わりに実施する

という選択肢もありかもしれません。

前回の記事で紹介したヒップスラスト
股関節の伸展位での出力が大きい種目ですので、
代替種目として適していると考えられます。

浅いスクワットだと
膝関節の伸展位で前方剪断力が大きくなるため(2)、
特に前十字靭帯損傷後の選手
ヒップスラストによる代替のほうが適している
かもしれません。

まとめ

深いスクワット、浅いスクワット、
どちらが優れているということはなく、
その選手のレベルや状況によって
左右される
ようです。

是非トレーニングプログラム作成の際の
一つのヒントにしていただければ幸いです。

執筆者:佐々部孝紀(ささべこうき)

参考資料

  1. Bazyler CD, Sato K, Wassinger CA, Lamont HS, Stone MH.
    The efficacy of incorporating partial squats in maximal
    strength training.
    J Strength Cond Res. 2014, 28(11), 3024-3032
    http://onlinelibrary.wiley.com/o/cochrane/clcentral/articles/875/CN-01104875/frame.html
  2. Hartmann, H, Wirth, K, and Klusemann, M.
    Analysis of the load on the knee joint and vertebral column
    with changes in squatting depth and weight load.
    Sport Med 43: 993–1008, 2013.
  3. Hartmann H, Wirth K, Klusemann M, Dalic J, Matuschek C
    and Schmidtbleicher D.
    Influence of squatting depth on jumping performance.
    J strength Cond Res 26: 3243–3261, 2012.
  4. Rhea Matthew R., Kenn Joseph G., Peterson Mark D.,
    Massey Drew, Simão Roberto, Marin Pedro J., Favero Mike
    Cardozo Diogo, Krein Darren
    Joint-Angle Specific Strength Adaptations Influence
    Improvements in Power in Highly Trained Athletes.
    Hum Mov 17: 43–49, 2016.